Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

ピアニスト 鈴木弘尚 その3(No.1578)

2008-08-07 19:21:48 | ピアニスト・ブレンデル&グールド
 前2回で書いた「日本国際音楽コンクール最終回(1995)」では、少なくとも1部の審査員から「余りにもかわいそう」の意見が出たようで、「奨励賞」を授与された。それから2年弱後、鈴木はイタリアに留学する。


 その後、新たなレパートリーが花開く。

  1. シューマン : 交響的練習曲作品13
  2. ラフマニノフ : コレッリ変奏曲作品42
  3. ヒナステラ : アルゼンチン舞曲

 次々と素晴らしいレパートリーが増え、コンクールでの活躍も広がる。(5年前鈴木が入賞した時の)浜松国際コンクールの時点で、出会ってから8年。(私高本自身がプロデュースしたピアニストを除くと)外国人も含め、最も惹きつけられたピアニストだったので、できる限り機会があれば、聴いていた。



    鈴木弘尚の1998年以降のコンクール歴は


  1. 1998 第14回園田高広賞ピアノコンクール優勝(メシアン賞と富士通賞も併せて受賞)

  2. 2000 第52回ブゾーニ国際コンクール第6位

  3. 2003 第5回浜松国際音楽コンクール第5位


 この成績を「素晴らしい!」と思うか「実力にふさわしい結果は得られなかった」と思うかは、(受け手により)それぞれだろうが、私高本は 2003年の浜松国際コンクール終了の時点では「実力にふさわしくない(= 不足気味の)結果」と感じていた。


 ・・・で、ふと思うと、「鈴木弘尚の演奏会をプロデュースしたい」と思ったことが皆無だったことに気付く。(一昨日まで全く気付いていなかった)
 プロデュースしたのは、川上敦子、岡原慎也、佐伯周子。3名のレパートリーとは、鈴木のレパートリーは重複していない。鈴木のメインレパートリーは

  1. シューマン
  2. ラフマニノフ
  3. プロコフィエフ
  4. ヒナステラ

 皆好きな作曲家だ。プロコフィエフなんて、「たった2人しか聴かないバレエ音楽大作曲家」である。う~ん、なぜだ???


 鈴木弘尚のCDをここ3日繰り返し聴いている。素晴らしい!

 しかし、シューマンとプロコフィエフに関しては「他の曲の鈴木の演奏」が全く思い浮かばないのである。名曲は多く作曲している作曲家であるのに。



  1. コンクールを勝ち抜くためには(ショパンコンクールなどごく1部の例外はあるが)

  2. 「バロック」「古典派」「ロマン派」「近代」「現代」などの各時代から満遍なく1~2曲づつ弾け

  3. 大きな減点をされないように、選んだ曲を「磨き上げる」


技術を競い合うのが「コンクール」である。「プロコフィエフの9曲のピアノソナタを手に入れているピアニスト」よりも、「ベートーヴェンソナタ1曲 + ショパンソナタ1曲 + プロコフィエフソナタ1曲 + ヒナステラソナタ1曲 = 4曲」を手に入れているピアニストの方が上位に行く。鈴木弘尚の磨き上げ方は最高級だった、と私高本は思う。但し「レパートリーは広がりを止めた」と感じた。


 現在、鈴木は「レコーディングを含めた演奏活動」に熱心なマネジャー(プロデューサー?)が付いている。鈴木の演奏が魅力的だからだ! 2枚出しているCDについて言及すれば

  1. シューマン : 交響的練習曲 作品13 は、ブレンデルやポリーニを越した演奏

  2. ラフマニノフ : コレッリ変奏曲 作品42 は、アシュケナージを越した演奏


に聞こえる。
 ・・・で、その水準の演奏が、他のシューマンの曲(「謝肉祭」とか「幻想小曲集」とか「幻想曲」とか名曲は多くある)や他のラフマニノフの曲で聴けるか? と言う感触が薄いのだ。


 鈴木弘尚の才能は輝くばかりだった! わずか17才で、「日本国際音楽コンクール」にてオーラを放っていた。今も放っている。だが「磨きに磨いた」からと言って「増加3曲」は、あまりにも(私高本には)少ない。ここ3回の「鈴木弘尚批評」は期待が大きかった鈴木弘尚が「思ったコンクールを取れなかった」ことが引き金になって書いた。コンクールには「年齢制限」があり、鈴木はそろそろ大半のコンクールの年齢制限に引っ掛かる。明日から始まるオリンピックでも年齢制限がある種目は意外に多い。例えばサッカーとか(爆


 13年前に、東京文化会館で「日本国際音楽コンクール最終回第3次予選結果発表」後に落胆していた鈴木弘尚 + 江口文子先生 の姿は、目に焼き付いていて忘れられない。「人生の全て」を賭けていた!


 もし、鈴木弘尚が「コンクールの呪縛」から逃れて、『得意の作曲家に集中』していて演奏が素晴らしかったならば、また違った音楽世界が広がっていた、と思う。


 鈴木弘尚の今後の大活躍を期待する、と共に、「シューベルトに関して」言えば

  1. 岡原慎也 や 佐伯周子 の「踏み込みの良さ」を
  2. 1回聴きたかった

と感じる。岡原慎也 も 佐伯周子 も(シューベルトに関して言えば)良い演奏と良くない演奏の差が激しい。(落差は)鈴木の比では無い。しかし「うまく決まった時」の爽快感が信じられないほど高い。『あらかじめ(コンクール用に)設定した高さ』では無いからだ。『対シューベルト』で、岡原慎也 や 佐伯周子 は「音楽」を決めている。時にはマネジャーから見ると、不必要に「高み」を狙って時間を費やしているように見えるのだが(爆


 今の私高本が鈴木弘尚に最も切望することは

得意な作曲家のレパートリー拡充


である。おそらく、現マネジャーと違うだろうが。
 今も「交響的練習曲 CD」を聴いている。この水準で「シューマン全曲」弾いたら、アシュケナージなんて目じゃないぞ、鈴木!!!
 世界に向けて(今以上に)羽ばたいてほしい > 鈴木弘尚

 才能を不必要に「細かな仕上げ」に使わないでもいいのでは? 「コンクール」はもう終わったのだから(もし、これからもコンクール受けるのであれば、ゴメンナサイ)


 誤解ないように言えば

  1. 鈴木弘尚は、才能は抜群に高かった!

  2. 大事なポイントで「裏技」に沈められた(← 13年前の日本国際音楽コンクール最終回)

  3. 注意深くなり過ぎて「踏み込み」がモノ足りない曲がいくつか出現している


である。鈴木弘尚 のおかげで、シューマンとラフマニノフの世界の魅力を教えてもらった私高本はこれからもますます活躍してほしい、と願うばかりである。
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