最初に弁解しておくが、この流行語の発信元となったテレビCM、吉野家のホームページなどでも調べたが正確な放映時期は特定できなかった。ただ、翌年の昭和55(1980)年に倒産の危機を迎える吉野家(西武グループにより再建)のいわば旧体制イメージの象徴のように、昭和54(79)年ごろ、このCMがしきりに流されていたという記憶がある。
牛丼を食って明日はホームラン。父親に「おみや(げ)」をもらった子供ならではの無邪気さと、「そんなんでホームランなんか打てるかい」という視聴者のツッコミの混じった印象深いCMだった。
この年の主な事件は、「初の国公立大学共通一次試験実施」「第2次石油危機始まる」「大阪市住吉区の三菱銀行北畠支店で人質事件発生」「ガソリンスタンドの日曜・祝日全面休業開始」「第5回先進国首脳会議(東京サミット)開催」「東名高速道路の日本坂トンネルで玉突き衝突事故発生」「千葉県君津市の神野寺で虎2頭が逃走」「上野動物園のパンダ・ランランが死去」「成田空港でKDD(国際電電)社員による高級ブランド品持ち込みが発覚」「国鉄のリニアモーターカー、走行テストで時速504キロを記録」など。
スポーツでは、江川卓投手が巨人軍に入団決定。ソニーの「ウォークマン」が発売。街ではヘッドホン姿の若者が見られるようになった。
牛丼一筋80年とうたった当時のCMからさらに40年もの時間がたった。この流行語の当時はまだまだ知名度が低かったものの、いまや女子も子供も利用する日本の代表的ファストフードとなった。いま、このCMを焼き直すとしたら、お父さんの「おみや」で、子供はホームランではなく何を成し遂げるのであろうか。(中丸謙一朗)
〈昭和54(1979)年の流行歌〉 「魅せられて」(ジュディ・オング)「おもいで酒」(小林幸子)「ヤングマン」(西城秀樹)