100年後のために、師匠の指導を 八角理事長に聞く
 若林哲治の土俵百景

貴景勝はこの1年が勝負

 稀勢の里(現荒磯親方)の引退で始まった2019年の大相撲は、朝乃山ら若手が力をつける一方で、白鵬が「壁」として踏ん張った。相撲人気は続いているが、暴力事案も後を絶たない。日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)はインタビューの中で、20年こそ新鋭たちの飛躍を期待するとともに、「100年後」にも大相撲が日本の伝統文化として残るよう、「師匠の指導」を最重要課題に挙げた。

 -2019年の土俵は、前年に続いて新旧交代が起きそうで起きませんでした。

 「御嶽海をはじめ若手の伸びがもう一つ、期待外れだった。それが残念ですね」

 -白鵬はこの1年、休場が前年より少なく、優勝2回。年齢(34歳)を考えれば踏ん張っています。

 「これだけ長く横綱を張って、大きなけがの少ない横綱はいないんじゃないか。普段の準備運動の賜物じゃないですか。最近はけがも増えたといわれますが、やっぱり本人の努力でしょう」

 -取り口については荒っぽいかち上げなどに批判もありますが。

 「私の場合は相手がかち上げにきた方がやりやすかった。相手の脇が空くからちょうど(突き押しで)いきやすい。かち上げてきたら相手の胸に穴を開けてやるぐらいのつもりでいきました」

 -そこを突けない若手が歯がゆい感じですか。

 「白鵬はいろんな立ち合いができる。かち上げたり上手を取りにいったり、張り差しにいったり。それで相手が集中できないのでは。だいたい横綱というのは、立ち合いが(相手によって)そんなに変わらないものですけど。それと動きが速い。相手より先に動く。瞬発力が衰えないのは大したもの」

 -春場所の千秋楽に三本締めをするなど、行いにも何かと問題がありました。

 「実績は評価しているんですよ。それを自分で下げるようなことはね…」

 -大関陣が上がったり落ちたりでした。

 「栃ノ心は白鵬とがっぷり四つで勝った相撲を見ると、ああ(横綱に)なるかなと思いましたが、やっぱり15日間通して良い成績を残すのは難しいものです。豪栄道は16年に全勝優勝もしたけど、年間通して勝つとなると、引く癖が身についてしまった。高安は、腰に関して言うと治してしっかり鍛え直せばできる。並大抵じゃないけども、私自身が経験しているから」

 -貴景勝も2回、けがをしました。

 「今が最高のところだと思う。上(横綱)を狙うのはこの1年が勝負。押し相撲はごまかしが利かないというか、馬力は若いうちの方があるから勢いに乗っていかないと。こういうタイプが横綱に上がるのは相当厳しいですよ。私の場合はまわしを取れたから、押せないときの対処ができたけども、押していなしてだけだと、相当な立ち合いの集中力が必要で、それを15日間続けるのは厳しい。もっともっと稽古量を増やして疲れない体を作らないと」

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