大河原邦男展(下)

安彦良和が語る「ガンダム THE ORIGIN」裏話 「初めから大河原ありきではなかった」

【大河原邦男展(下)】安彦良和が語る「ガンダム THE ORIGIN」裏話 「初めから大河原ありきではなかった」
【大河原邦男展(下)】安彦良和が語る「ガンダム THE ORIGIN」裏話 「初めから大河原ありきではなかった」
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昭和54年に放送が始まったリアルロボットアニメの金字塔「機動戦士ガンダム」によって、メカニックデザイナー、大河原邦男さん(67)の仕事も大きく広がっていく。同作で作画監督やキャラクターデザインを担当し、その後、漫画家としても活躍する安彦良和さん(67)に、当時の思い出や大河原メカの魅力を聞いた。

「ガンダム」が生まれるまで

これはいろんなところで言っているのですが、「スタジオぬえ」(「宇宙戦艦ヤマト」や「超時空要塞マクロス」などに参加したSF企画制作スタジオ)が描いた、(米国のSF作家)ロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」のイラストがあったんです。当時の「スタジオぬえ」の代表だった(SF作家の)高千穂遙が、それを僕らに「読め」と勧めて、「こういうコンセプトもある」と教えてくれたんです。それを参考に、(総監督を務めた)富野由悠季(よしゆき)プランと相まって、「機動戦士ガンダム」の企画が進んでいった。

その流れでいえば、メカデザインは「ぬえ」であるべきだった。ただ、そのとき僕は、絵を描く人間として「あえて『ぬえ』ではないところに発注したい」と言ったんです。テレビアニメはアバウトなものですから、そこにあまり理屈を持ち込まれると、不自由になってしまう。当時、そういう経験を「ぬえ」との間で何度かしていたので、自分が消耗することを恐れて言ったんです。

それで、当時、メカデザインをやっていたのはほかに「メカマン」(中村光毅さんと大河原さんが設立したデザインスタジオ)しかない。それで大河原さんが参加することになりました。高千穂遙は今も僕の友達だし、「ぬえ」に対しては不義理をしたと思いますが、結果的にはそれで正解だったのだろうと思います。

アニメーターとしては、シンプルなデザインに越したことはないんです。線の多い「ぬえ」のデザインに比べ、大河原さんのデザインには、シンプルなイメージがありました。大河原さんに落ち着いたときは、良かったと思いましたね。

「曲線主体で斬新だった」

メカのデザインワークは、スポンサーとのやり取りが多く、消耗する部分なんです。僕は全てのデザインワークについて知っているわけではありません。

当初、大河原さんは途中参加だったので、われわれのイメージが十分には伝わっていなかった。そこで僕が、後に「ガンキャノン」の前身に当たる1枚を描きました。「これは主役メカにはならない」ということで、(主役メカからは)却下になったのですが…(笑)。

その後、「ガンダム」のデザインが上がってきまして、僕は一つ注文を付けたんです。そのデザインも公表されていますが、「口」が付いていたんですね。そこで、「(今回の企画に)口はいらないはずだ。むしろ、あっては困る」といって、マスクを付けたんです。それから、カラーリングもやりました。

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