牛肉取引禁止令差し止め インド最高裁
■インド最高裁 ヒンズー至上主義のモディ政権が出した雄牛や雌牛、水牛、ラクダを解体のために取引することを禁じた命令を一時差し止めた。禁止令を受け、水牛肉の価格は2倍以上に値上がりしていた。
ムンバイの食肉店で働くモハンマド・アシュラフ・セイードさんは「我々の暮らしがかかっている」と述べた。セイードさんは、「農家は高齢で非生産的な牛だけ(解体業者に)売る。若い牛に代えるためだ。我々食肉産業はこれに大きく依存している。これらの販売を禁じることは、既に圧力を受けているこの業界にさらに悪い影響を与えるだろう」と話す。
ヒンズー至上主義のモディ政権は5月23日に雄牛や雌牛、水牛、ラクダを解体のために取引することを禁じる通達を出した。これらの動物は農作業や乳製品のためだけに取引できるとしていた。
これに対し、南部タミルナド州のマドラス高等裁判所が同月30日、政府の畜牛の解体禁止措置を差し止めた。さらに最高裁判所は11日、マドラス裁判所の決定を国内全土で有効とする判断を下した。
この判断は、12億5000万人を超す同国人口の約15%を占めるイスラム教徒が支配する同国の牛肉、皮革産業にとって重要だ。
インドで大多数を占めるヒンズー教徒は雌牛を母性の象徴としてあがめており、同国の大半の地域で解体は禁じられている。2014年5月のモディ政権発足以降は、牛肉を保管したり輸送したりしている疑いのあるイスラム教徒が殺害される事件も起きた。
セイードさんは、「水牛の肉が禁止されたことはないが、人々は取引すれば雌牛の保護団体から攻撃を受けるのではないかと懸念している。こうした団体は、神聖な動物を解体していないかもしれない、水牛の肉を取引する有効な資格を持っている可能性のある人々を攻撃している」と話す。
こうしたことを背景に水牛肉の価格は1キログラム当たり100ルピー(約175円)から2倍以上の220ルピーに値上がりした。鶏肉も同様の価格水準で、羊肉は現在1キログラム当たり400ルピーで売られている。(ニューデリー=キラン・シャルマ)