墓埋法をわかりやすく解説!トラブルを避けるために覚えるべきこと

墓地の椅子に置かれている骨壷

供養や改葬を行う際に、役所へ申請書を提出する必要があるのを知っていますか?

人が亡くなってから火葬・納骨を行うために、いくつかの手続きをする必要があります。
そうしたお墓や葬儀に関する決まりを定めているのが、「墓埋法」です。

  • 「改葬するときって、申請書はどこに何を出せばいいの?」
  • 「海に散骨をしたいけれど、自分たちで勝手にやってもいいの?」
  • 「お墓がある寺院ともめてしまった!遺骨の権利はどちらにあるの?」

あまり身近ではないお墓や遺骨に関することで、不安に思うことは多いのではないでしょうか。
大切な人の遺骨を扱うのですから、穏やかに事を済ませて安心したいですよね。

この記事では、墓埋法についての概要や条例関係でのよくあるトラブルや気をつけることをまとめています。
ポイントをおさえて、トラブルを未然に防ぎましょう。

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この記事の目次

  1. 「墓埋法」とは、お墓や埋葬などに関する法律
  2. 墓埋法が関わるケースまとめ
  3. 知っておきたい墓埋法のよくある3つのトラブル
  4. まとめ
  5. 監修者コメント

「墓埋法」とは、お墓や埋葬などに関する法律

「墓地、埋葬等に関する法律」(通称「墓埋法」)は、昭和23年に制定された、墓地や火葬場などの遺骨や遺体の処理などに関しての法律のことです。

日本国憲法では「信教の自由」「思想・信条の自由」が保証されているために、思想や宗教などに関しては言及されていません。あくまで公衆衛生上の法律なのです。

なお、墓埋法ができるまでは、明治17年に出された「太政官布達墓地および埋葬取締規則」に依っていました。
それでは、墓埋法のおもな内容を見ていきましょう。

第2条は総則 この法律での呼称を定義付け

第2条は総則です。つまりこの法律の中での呼び名の確認です。

この法律の中で

  • 「埋葬」とは、死体を土中に葬ること
  • 「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くこと
  • 「改葬」とは、1度埋葬した死体、あるいは埋蔵や収蔵した焼骨を他のお墓や納骨堂に移すこと
  • 「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設のこと
  • 「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(または市長や区長)の許可を受けた区域のこと
  • 「納骨堂」とは、焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設のこと
  • 「火葬場」とは、火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設のこと

という呼称の定義付けが行われます。

ここで分かるのは、以下の3点です。

  1. 「死体」は「埋葬」します。つまり、制定が昭和23年ですから、土葬が想定された法律であるということです。
  2. 「焼骨」は「埋蔵」(=骨壺のまま土中に埋めること)あるいは「収蔵」(=お墓の納骨室やお寺の納骨堂などに遺骨を安置すること)と、細かく定義分けされています。
  3. また、法律上は「墳墓」(=墓)と「納骨堂」は別のものと区別されています。

第3条は24時間ルール 火葬は死後24時間を超えてから

火葬は死後24時間を超えてからでないと行えません。ご存知でしたでしょうか?

埋葬または火葬は、死亡又は死産後24時間を経過したあとでなければなりません。これは、死体が万が一蘇生することがあってはならないための規定です。
ただし、生後7ヶ月未満の胎児や、感染病の恐れがある場合などはこればかりではありません。

第4条では埋葬は墓地に限ることを規定

第4条では、埋葬または焼骨の埋蔵は墓地以外でしてはいけないとなっています。

つまり、墓埋法制定まではどこにお墓を作ってもよかったということです。
墓地は地域の共有空間であったために、法律ではなく、その地域の慣例や風習で利用されていたのです。

第8条はそれぞれの許可証について

火葬の時は「火葬許可証」、埋葬の時は「埋葬許可証」、改葬の時は「改葬許可証」が必要です。なおこれらを許可するのは市町村長です。

第10条は墓地経営について

墓地や納骨堂や火葬場を経営するには都道府県知事の許可が必要です。

それでは、次の章では具体的に起こりうるケースに沿って、墓埋法と供養を見ていきます。

墓埋法が関わるケースまとめ

墓埋法で定められた法律が、実際に私たちの供養や埋葬に影響を及ぼしそうなケースをまとめました。

火葬は死亡後24時間を経過してから

墓埋法では、死亡後24時間以内の火葬を禁止しています。

さきほども触れたように、死体が万が一蘇生するのに関わらず火葬をするわけにはいかないからです。
医師の診断からさらにあと24時間、死体の経過を確認する猶予を設けるのです。

直葬などの場合、24時間以内に葬儀をしたいと希望される人は若干名おられます。
仮に、火葬炉が空きがあり、準備がスムーズに整ったとしても、死後24時間は火葬ができないので充分に気をつけましょう。

火葬許可証ついての一連の流れ

どなたの葬儀でも必ず執り行われるのが火葬です。その手続きについて、一連の流れとともにまとめました。

ちなみに多くの葬儀社では火葬が終わるまでの手続きを代行してくれるので、任せておくのがよいでしょう。

  1. 1人が亡くなると、その死亡を証明するために医師が「死亡診断書」あるいは「死体検案書」を発行します。この公文書には、死亡者の名前、死因、死亡時刻、死亡場所などが記されています。
  2. 「死亡診断書」あるいは「死体検案書」は同時に役所へ提出する「死亡届」となります。死亡届を受理した役所は、市区町村長の名前で、遺族に火葬の許可を出します。これが「火葬許可証」です。
  3. 火葬するためには、「火葬許可証」を火葬場に提出します。これは、市長が死体の火葬を許可したことを認める文書です。
  4. 火葬許可証は、火葬が終わると火葬済みの印が押され、遺族に返されます。
  5. 埋葬の時にはこの火葬済証を墓地の管理者に提出します。

改葬などに関する届けについて

改葬を希望する場合には、改葬元の市町村長に改葬を許可してもらわなければなりません。
この文書が「改葬許可証」です。

墓地に埋葬した遺骨を取り出して別の墓地に埋葬したい場合、改葬元の自治体から「改葬許可証」を発行してもらって改葬先の墓地に提出しなければなりません。

改葬手続きは主に以下のような流れで進んでいきます。

  1. 改葬許可申請書に必要事項を記入します。また、この書類の中では改葬元の墓地の管理者の署名と捺印をいただかなければなりません。
  2. 役所に改葬許可申請書ならびに必要書類を提出し、改葬許可を申請します。
  3. 市区町村長から改葬の許可が下りたら「改葬許可証」が発行されます。
  4. 改葬元の墓地から遺骨を取り出します。
  5. 改葬先の墓地に改葬許可証を提出し、遺骨を埋葬します。

改葬ではいくつかの注意点があります。
改葬許可証と一緒に提出する必要書類は自治体によって異なります。必ず事前に役所に確認しましょう。

寺院墓地や、地域の共同墓地などの場合、書類がきちんと管理されていない場合があるので、このような場合はすみやかに役所に相談しましょう。

散骨に関する規定がない

自分の遺骨は、お墓の下に埋葬するのではなくて、海や山に撒いてほしい。このように願う人は一定数います。

さて、墓埋法は基本的には、「死体の埋葬」あるいは「焼骨の埋蔵あるいは収蔵」についてのみを規定する法律です。
つまり、散骨についての規定がないのです。

これは、昭和23年の制定時にそのような葬法がなかったからでしょう。
そのため、散骨は墓埋法の解釈の仕方によってなされています。

知っておきたい墓埋法のよくある3つのトラブル

ケース1:許可がない場所で散骨をすることは違法

散骨は合法か、違法かの線引きは未だになされていないというのが現状です。

しかし、散骨を推奨する「NPO法人 葬送の自由をすすめる会」は散骨が合法だと主張しています。
この会は、その合法の根拠を1991年に法務省が出した見解にしています。

散骨は刑法第190条に定めのある「遺骨遺棄」や、墓埋法第4条「墓地以外への遺骨埋蔵禁止」違反に当たるかどうかという問題を抱えています。

当時の法務省は「葬送を目的とし節度を持って行う限り、死体遺棄には当たらない」という意味の見解を述べています。

ただ、こうした法務省や厚生省の見解も公式なものかどうかは定かではありません。
現在の散骨は、「黒でもなければ白でもないグレーゾーン」だと言えます。

山や川への散骨はあまりおすすめできません。
山は誰かの私有地ですし、川は私たちの生活圏内にあります。

こうした理由から海への散骨が一般的なようにも見受けられます。
散骨に臨むにあたっては、必ず遺骨をパウダー状にしましょう。

ケース2:墓石を建てる場所は決められた範囲内

いまでも地方などの道を自動車で走っていますと墓地ではなく故人の土地にお墓が建てられているのを見かけます。
おそらく考えられるのは、墓埋法が制定される前から建てられていたお墓なのでしょう。

原則として、都道府県知事が墓地として認めた場所以外での埋葬は禁止されています。
自分の土地にお墓を建てたいと考えている人は気をつけましょう。

ケース3:お墓が勝手に撤去されることもある

家族や親族などが音信不通になり、お墓が無縁になると、経営者はお墓を撤去することができます。

「墓地を買う」というのは、所有権ではなく使用権を買うことです。敷地の所有権はあくまでも墓地の経営をしている寺院や霊園にあります。

そのため、家族が音信不通になった場合には、墓地をそのまま放置しておくわけにはいきません。
経営者は一定の手続きを踏むことで、使用権を剥奪して墓石を撤去することができるのです。充分に気をつけましょう。

まとめ

一般人である私たちが墓埋法のすべてを覚えておく必要はありませんが、この法律をもとに火葬や埋葬などが規定されています。

また、葬送の多様化が叫ばれているのに対して、法律が時代に追いついてないという声も多く上がっています。

それでも、亡くなった人の処理には衛生的な問題がつきまといます。
自分らしい供養の仕方を望む人も、法律の範囲内で埋葬などを執り行いましょう。


監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

葬儀やお墓についての法律は、さほど多くありません。
個人情報も死をもって保護からはずれます。

低所得者の場合は、墓地・埋葬等に関する法律のほか、生活保護法が、行き倒れなど身寄りのない人は行旅病人及行旅死亡人取扱法が根拠法として適用されます。

よく間違えられるのが「埋葬」という言葉。
厳密には土葬を前提とした葬送方法のことを「埋葬」といい、火葬後に納骨される葬送方法のことは「埋蔵」となります。

また、納骨堂に納めることを「収蔵」と区別されているのも案外知られていません。
言葉の使い分けはともかく、墓埋法は昭和23年に制定されて以来、大きな変更がない法律です。

現代の事情に即しているかどうかは疑問ですが、葬送は法律で規制できるものではありません。
第一条の書かれているように「国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われることを目的とする」ことが大切だと思います。

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