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長引くしゃっくりには要注意

2016/08/11
薬師寺泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 僕が医学生だった頃、医師としてしゃっくりを治療する日が来るなんて思っていませんでした。しかし、しゃっくりがしんどくてERを受診される人は意外と大勢いらっしゃいます。

 しゃっくりは、医学用語では「吃逆」と書きます。吃逆は横隔膜が不随意的に痙攣を起こすことで生じるので、中枢から横隔膜までの神経経路を刺激する病態があれば起こると考えられます。様々な病態が隠れている可能性が示唆されますが、多くの場合は食べ過ぎなどで迷走神経や横隔膜を刺激して発生するわけです。

 原因はともあれ、小学生の頃「吃逆を100回すると死ぬ」とどこかで聞いた僕は、必死になり吃逆を止めようとあれこれの方法を試しました。腹圧をかけながら嚥下してみたり、ロングブレスダイエットみたいに延々息を吐き続けてみたり……。しかしなかなかうまくいかないものです。僕が勝手に尊敬する福井大学救急部の林寛之先生が、著書の中で「NGチューブを突っ込んで勢いよく引き抜くと迷走神経が刺激されていい」という旨のことを述べておりますが、自分でやるにはなかなかの勇気が必要です…。

柿のヘタを20個煎じて飲めばOK
 鼻咽頭刺激や迷走神経刺激(バルサルバ法でもいいですよ)を試して、うまく止められない場合には投薬治療も検討されます。吃逆を止める薬としては、クロルプロマジンやメトクロプラミドがよく使われるかもしれませんが、高齢者では副作用のこともあり、やたらには使いにくいなという印象があります。富山大学出身の僕としては漢方薬も紹介したいところです。

 実は富山大学医学部には和漢診療学講座があり、医学部医学科の卒業試験にはなんと漢方の試験もあります。卒業後、救急患者を診察する研修医に「このろくきみこなんちゃら(六君子湯)って漢方薬ですか?」と聞かれたことで、あぁ他の大学では漢方やらないんだと気付きました。(参照)。

著者プロフィール

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)●やくしじひろまさ氏。富山大学卒。岸和田徳洲会病院(岸徳)での初期研修を経て救急医療の面白さに目覚め、福岡徳洲会病院ERで年間1万件を超える救急車の対応に勤しむ。2013年から岸徳の救命救急センターで集中治療にも触れ、2020年から薬師寺慈恵病院に職場を移し、2021年1月からは院長として地方二次救急病院の発展を目指している。週1回岡山大学の高度救命救急センターに出入りし、ますます救急にのめり込んでいる。

連載の紹介

薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」
ER×ICUで1人盛り上がる救急医。愉快な仲間達と日本一明るい救命センターを目指して日々奮闘し、「ER診療の楽しさ」の伝承にも力を入れています。出会った患者のエピソードや面白かったエビデンス、ERを離れた救急医の日常までを綴ります。

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