香港の禁区「沙頭角」70年ぶり一般開放 観光振興ねらう
【香港=木原雄士】香港政府は3日、中国本土との境界沿いに設けた立ち入り禁止区域(辺境禁区)の「沙頭角」を約70年ぶりに一般開放した。今後半年間、試験的に団体客を受け入れ、本格開放を検討する。政府は広東省深圳市に近い香港北部を大規模開発する構想を進めており、観光振興につなげる。
辺境禁区は中国本土からの不法な越境を防ぐ目的で1951年に設定された。街の入り口に検問所があり、地元住民と特別な許可を得た人しか入れなかった。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は3日の記念式典で「文化や自然保護を中核にした観光の発展を期待する」と述べた。
外部の立ち入りを長年制限してきた「禁区中の禁区」(政府保安局)で、香港側から深圳住民の姿がはっきりと見える珍しい場所だ。開放の対象から外れたものの、1本の通りを挟んで深圳と香港が隣り合う「中英街」は習近平(シー・ジンピン)国家主席の父、習仲勲・元副首相が改革開放の政策を構想した場所の一つとされる。
訪問するには旅行会社が主催するツアーに参加する必要があり、費用は1人299香港ドル(約5000円)から。沙頭角の埠頭からは独自の文化を持つ客家(ハッカ)の村も近く、エコツアーなどが企画されている。