正論

津軽海峡を全面領海にして守れ 東海大学教授・山田吉彦

 尖閣諸島をはじめとする東シナ海は目下、日本の海洋安全保障の上で最大の焦点である。だが、北方海域および日本海の情勢も予断を許さない。今年7月、中国とロシアは日本海で共同軍事演習を行った。中国の北海艦隊はその後、日本海を縦断し宗谷海峡を経由して太平洋へと向かい、日本を牽制(けんせい)するように本国へ帰航している。防衛省関係者によると、ロシア海軍の動きも激しく、今年は北方海域に姿を現す艦艇数が昨年の2倍に増加しているという。

 中国艦船の示威になす術なし 

 日本海の入り口に当たる宗谷、津軽、対馬の3海峡を通過する外国船の数も増えている。とりわけ津軽海峡は気がかりだ。

 津軽海峡を東西に通航する船舶は多い。2009年にここを経由した国際航路のコンテナ船の数だけでも1798隻に上る。韓国の釜山、中国の青島、ロシアのウラジオストクなどの港から北米へと至る最短航路だからだ。

 日本は1977年に定めた領海法で、沿岸から12カイリ(約22キロ)の領海幅を設けている。しかし、宗谷海峡、津軽海峡、大隅海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道の5海峡だけは、領海幅を3カイリ(約5・6キロ)に設定して、海峡の中央部を公海としている。

 公海では日本の国家主権が適用されない。航行中の船で起きた犯罪は、船籍が置かれている国が管轄することになる。他国の海軍の行動を制限することもできない。艦船が示威行為に及んだとしても抗議すらできないのだ。

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