富士急勝沼「周遊バス」季節運行始まる 観光振興に期待

 富士急山梨バスは24日から、甲州市勝沼地区でブドウ狩りやワイナリー巡りの観光客向けに「勝沼周遊バス」の運行を始めた。日本ワインのブームが続き、勝沼など県内産地を訪れる観光客も増えているが、「クルマなので試飲できない」といった不満が根強くあった。周遊バスを上手に使えば、電車とバスで気軽に勝沼を巡ることができる。地元が推し進めるワインツーリズムの普及にどう影響するか、注目されそうだ。

 勝沼周遊バスは、9~11月の土、日曜、祝日とゴールデンウイークだけの季節運行。JR中央線の勝沼ぶどう郷駅を起点に、1周16キロ(38分)のコースを「左回り」「右回り」各4便が走る。

 300円の均一運賃だが、11カ所の停留所で乗降できる1日フリー乗車券(1000円)もある。

 甲州市役所勝沼支所前で24日行われた出発式では、田辺篤市長が「待望のバス路線が実現してうれしい。観光客誘客や移住・定住のきっかけになれば」とあいさつ。富士急行の堀内光一郎社長も「世界水準になった地元ワイナリーをJRとバスで訪ねやすくなった。通年運行できるように、地元の皆さんも積極的に利用を」とアピールした。

 ワインは確実に観光の柱となっている。県観光部がまとめた圏域別の観光入込客数の統計でも、「勝沼ぶどう郷周辺」は平成26年、年間約156万人と、調査を始めた22年の同123万人から30万人以上も誘客を伸ばしている。

 それだけに、飲酒運転の心配をせずにワイナリーを楽しむため、来訪者に便利な公共交通機関を求める声は多かった。

 実際に、フリー乗車券で乗ってみると、ブドウ棚が続くのどかな光景をバスはゆっくりと走り、2カ所の人気ワイナリーで思う存分に試飲を楽しめた。

 勝沼ワイン協会の大村春夫会長(丸藤葡萄酒(ぶどうしゅ)工業代表)も「大歓迎だ。ぜひ通年運行してほしい。観光のインフラが整えば、カフェやレストラン、宿も増え、ワイナリーにもっとおもてなしの気持ちが出てくる」と期待をかける。

 富士急山梨バスによると、利用者数は初日の24日が42人、翌25日は61人とまだ少ないが、取り組みはまだ始まったばかり。ワイナリーめぐりのモデルコースづくりや増便、住民向けに運行されている市民バスとの連携など、バス会社と行政、ワイナリーなどが知恵を出し合い、使いやすさを高める工夫が期待される。

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