ベネズエラ停電1週間 復旧宣言も断水・略奪続く
【サンパウロ=外山尚之】南米ベネズエラで7日に全土で発生した停電から1週間が経過した。マドゥロ大統領は100%復旧したと宣言するが、依然として停電が多発する地域が多く、断水も深刻な状況は変わっていない。復旧の遅れを背景に略奪行為も多発するなど混乱が続いている。
「電気は戻ってきたが、たびたび停電するなど不安定な状態だ」。カラカス在住の男性は14日、日本経済新聞社の電話取材にこうこぼした。マドゥロ氏は15日、「100%の電気を復旧した」と発表したが、首都カラカスですら電気は不安定で、完全復旧にはほど遠い状態だ。
断水も市民を悩ます。長期間にわたり給水ポンプが止まったため、多くの地域で水の供給が止まり、復旧が遅れている。カラカスでは多くの人々が湧き水を求め、山に登る。自動車などの移動手段を持たない低所得者層などは生活排水などで汚染された川の水をくんでおり、健康被害も懸念される。
政情混乱が続く中での大停電となったことで、マドゥロ政権は野党や米国など、敵対する勢力への攻撃姿勢を強める。今回の停電はベネズエラの電力の大半をまかなう水力発電所や配電網の整備不良が原因とみられるが、マドゥロ氏は15日夜のテレビ演説でトランプ米大統領とボルトン大統領補佐官を名指しし、「米国がサイバー攻撃をしかけてきた」と強調した。
マドゥロ氏は野党勢力が米国と共謀して今回の事態を引き起こしたと主張し、「公共サービスを確保するため、軍に新たな部隊を設立する」と宣言した。電気や水道を防御する名目で軍の権限をさらに強める狙いだ。
シンクタンクのエコアナリティカは今回の停電により、1日あたり1億8000万ドル(約200億円)から2億ドルの経済損失が発生しているという。少なくとも国内総生産(GDP)を2%押し下げるとの指摘もある。
停電が長引いたことで、世界最悪水準とされる治安の悪化にも拍車がかかっている。冷蔵設備の不良などで食品不足が深刻になる中、食料品店などでは略奪行為が頻発。同国第2の都市である西部マラカイボでは、暴徒化した市民にショッピングモールが襲撃された。
非政府組織(NGO)のフォロペナルによれば、停電発生後、14日までに少なくとも約320人が当局に逮捕され、うち200人は強盗容疑だという。