「Vaundyってアーティストがすごい!」と、筆者のまわりでよく耳にするようになったのは昨年末頃。YouTubeに続々と楽曲をドロップし、SNSで拡散させ、楽曲の力でバズを起こした正体不明のアーティストとして噂になっていた。筆者は、自粛期間中に観たフジテレビのオンデマンド放送、FODのドラマ、『東京ラブストーリー』の主題歌「灯火」で、ようやく彼の名前と曲が合致した。
「僕は、音楽活動をするために戦略的に準備をしてきたんです。YouTubeデビューした2019年の秋頃から月1でオリジナル楽曲、月2で集客のためのカバーをアップしていったんです。それを続けていたら"あの曲"がバズった」
あの曲とは、ミュージックビデオが1300万回再生以上を記録し、現在のVaundyの代表曲となった「東京フラッシュ」。この曲は、「J-WAVEに流す曲」と決めて製作を進めたという。耳なじみのよいアーバンなメロディーと軽快なリズム、キャッチーな「東京」をタイトルにのせ、歌詞を紡いで完成させた。その一流マーケッターのような読みが見事に的中し、念願のJ-WAVEを含めた多くのラジオ局で「東京フラッシュ」がパワープレイされた。ティーンの心を掴み、一躍時の人となった現役大学生のVaundyは、突出した分析力の持ち主である。YouTubeによって成功の階段を上っているが、いまの情報社会で音楽も変わったと感じるという。
「カセットテープとCDの全盛期は、ミュージシャンは手の届かない存在だった。当時、ミュージシャンを知る手段は、テレビやラジオ、CDと封入された歌詞カードのみ。いまは、デジタルの普及でネット検索すれば曲が聴けるようになり、歌詞もすぐに調べることができる。そして、SNSの発展で作り手と聞き手の距離が近づいたことで、歌詞やメロディーの重みが変わってしまったように感じるんです」
CDから配信、YouTubeへと音楽の聴き方、付き合い方が変わり、ミュージシャンを取り巻く環境も変わった。
「過去への憧れはありません。僕は、楽曲から映像制作までひとりでおこない、Vaundyというアーティストを作りあげる。音楽だけじゃなくてマルチアーティストとして生きていきたいんです。だから、僕の作品をさまざまな角度から見てほしいですね」
弱冠20歳のVaundyは、その類まれなるセンスでこれからの邦楽シーンをマルチにカラフルに彩ってくれるはずだ。
Photo 太田好治 Yoshiharu Ota
Edit marble studio