From US [Vanity Fair] Jan. 2014

ホットヨガ創始者のご乱心!?──ヨガ教室の元生徒がセクハラ疑惑で次々と提訴

全世界にホットヨガブームを広めたビクラム・チョードリー。数々の高級車にビバリーヒルズの豪邸と、ヨガ界の“バッドボーイ”とも呼ばれたそのビクラムが今、セクハラスキャンダルの渦中にいる。 数々の高級車にビバリーヒルズの豪邸。全世界にホットヨガブームを広めたビクラム・チョードリーが今、セクハラスキャンダルの渦中にいる。
ホットヨガ創始者のご乱心──ヨガ教室の元生徒がセクハラ疑惑で次々と提訴

GQ GLOBAL VIEW
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全世界にホットヨガブームを広めたビクラム・チョードリー。数々の高級車にビバリーヒルズの豪邸と、ヨガ界の“バッドボーイ”とも呼ばれたそのビクラムが今、セクハラスキャンダルの渦中にいる。

Text: Shogo Hagiwara

Photos: David Strick

小誌編集部が入るビルからほど近いところにも“ホットヨガ”の名を掲げるヨガスタジオが商いを行っているが、その源流となるコンセプトを、40年も前に立ち上げたのが、このビクラム・チョードリーという人物だ。

“ホット”と呼ばれる所以は、ビクラムの出身地であるインド・カルカッタとほぼ同じ摂氏40度に保った教室でヨガのトレーニングを行うためで、26におよぶポーズと2種類の呼吸法を合わせたセッションをぴったり90分のクラスで行う。

ヨガがアメリカ西海岸では単なるサブカルのムーブメントでしかなかった時分に立ち上げたが、現在では、アメリカ全土は言うに及ばず、ここ東京、そしてブエノスアイレス、バンコクなど全世界で600カ所ものスタジオを擁する一大ヨガ帝国を築いた。ロサンゼルスを本拠とし、ジョージ・クルーニーレディー・ガガなどセレブの愛好者が多いことでも知られる。そんなヨガ界の“グル”として君臨するビクラムだが、近年はセクハラ疑惑で、元生徒の女性たちから次々と訴えを起こされている。その真偽、そしてあたかも負のスパイラルを急降下していくビクラムの現況を、原告側の証言や訴状をもとに検証している。

この記事の中心人物のひとりが、ジェーン(仮名)で、ビクラムホットヨガとの出会いは2004年、ネイルアーティストとして働いていた21歳のときだ。「エネルギーが内面から湧いてくるだけでなく、ヒーリングで、スピリチュアルで、ワークアウトとしても充実している。すぐに虜になったわ」と回想するジェーン。その後間もなく、ビクラム自身がインストラクターを務めるトレーニングセッションに参加。これは年に2度開催される、9週間ぶっ通しのブートキャンプで、参加するには10,000ドルを超える費用が必要となる。ジェーンが参加したのは、2010年9月にサンディエゴで行われたもので、世界33カ国から400人近い生徒が集まったという。

黒のビキニパンツ一丁に宝石をちりばめたロレックス、さらには後退する髪を後ろに引っ詰めて縛ったヘアスタイルがトレードマークと、一見特異な風貌だが、ヨガマスターとしての才能は確かなようで、薫陶を得た生徒はみなその後光が射したかのような絶大なる存在感に心打たれることとなる。が、そこがビクラムの狙いどころでもあり、目を付けた女性を近くに置き、心をほだしては、ふたりきりのシチュエーションを意図的につくり犯行におよぶのだ。

さらに筆者は、ビクラムの常軌を逸した最近の言動にも注目。ゲイや黒人の生徒に対し、公に差別的発言を吐いたり、ハーバード大学に自分の名前を冠したビルを建設予定など、すぐに裏を取れるような嘘まで口にするという。

知名度も富もある意味、突き抜けるところまでいってしまったのだから、失うものはあまり多くないのかもしれないが、いまだ熱心にフォローするビクラムヨガの生徒がいることを考えると、「殿のご乱心」だけで済まされる話でもなさそうだ。

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