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フランチェスコ・トッティ「完全な“ひらめき”というのはほとんど存在しない」

2013.01.28

ワールドサッカーキング』2011年0421号(No.175)より一部再掲
「インタビュー・ライブラリー」では、過去にワールドサッカーキングやカルチョ2002などで掲載した選手や監督のインタビューを改めて紹介。懐かしい写真とともに、お楽しみ下さい。
トッティ

パスを出す側とすれば、受け手のプレースタイルを理解し、受け入れるのは当然のことだ

今回はパスやアシストについての技術論だ。まず、自分が優れたパサーになれた理由は何だと思う?

トッティ まずは、俺が子供の頃からアシストするのが大好きだったということ。味方のゴールを演出することに大きな喜びを感じていたんだ。そして、テクニックを磨く努力を怠らなかったことだろうね。

では、優れたパサーに必要な資質を挙げるとしたら?

トッティ 次のプレーを予知する能力かな。パスを受ける瞬間に、次のプレーを高い精度で予測する。そのために重要なのは、判断する時点でいかに多くの情報を持っているか。一言で言えば視野の広さということになる。当然、正確なパスを出すためのテクニックも必要だ。テクニック抜きで技術論は語れないからね。

多彩なパスのバリエーションも君の持ち味だけど、君は何種類のキックを蹴れるんだろうか?

トッティ 数えたことはないけど、どんな種類のキックだって蹴るよ(笑)。俺は右利きだけど、左足でも同じように蹴ることができる。もちろん、インサイドもアウトサイドも使える。微妙な蹴り方でパスの軌道に変化を付けるのも得意だ。パサーとしては、多くの種類のボールを蹴ることが大きな武器になる。ただ、それだけじゃ意味がない。どの選手もパスの受け方には好みがある。その選手が欲しがるパスを出してやることが大切なんだ。だから、キックの種類を増やすだけじゃなく、練習や試合でチームメートの動きを観察することもすごく重要なんだ。

パスの受け手にはどんな動き、プレーを求める?

トッティ 俺から何かを求めることはないよ。パスを出す側とすれば、受け手のプレースタイルを理解し、受け入れるのは当然のことだからね。いつも受け手のプレースタイル、クオリティーに合わせてパスを出すようにしているよ。

では、君がプレーした中で「相性が良かったパスの受け手」を教えてもらえるかな?

トッティ (ヴィンチェンツォ)モンテッラ、(ガブリエル)バティストゥータ、(マルコ)デルヴェッキオはすごく相性が良かった。それと(ヴァンサン)カンデラも忘れてはいけない。カンデラはFWじゃないけど、お互いの動きを目で確認しなくてもプレーできるぐらい、呼吸がぴったりだったからね。「ボールで会話ができる仲」ってやつだよ。代表で相性が良かった選手ならピッポ(フィリッポ・インザーギの愛称)だね。俺がディフェンスラインの裏にスルーパスを出すのと、ピッポがスペースに走り込むタイミングがぴったり合えばそれで1点だ。その微妙なタイミングの調整を2人でやるのは楽しかった。

彼らのプレースタイルをまとめることで、優秀なパスの受け手がどんなものかが分かるのでは?

トッティ 優秀なパスの受け手はみんな“働き者”だ。どこか一カ所にとどまることなく、相手のマークを外すために常に駆け引きをして、動いている。次に起こるであろうプレーを予測する能力にも長けているね。

残念だけど、特別な練習は存在しない。テクニックの上達に近道はないんだ

トッティ
今のサッカー界で君が評価しているパサーは誰?

トッティ (リオネル)メッシだね。偉大なるストライカーだけど、パサーとしても最高の資質を備えている。相手DF数人を引き付けた上で、フリーになったチームメートに絶妙なパスを通す。自分で作ったスペースにパスを通す芸当はすごいよ。あとは(アンドレア)ピルロのパスも気に入っている。代表で一緒にプレーしたけど、タイミングもコースも、俺が欲しいと思っている通りのパスを送り届けてくれるんだ。

これまでのアシストの中で特に気に入っているものは?

トッティ ローマで決めたアシストはすべて気に入っている。どれか一つを選べと言われても多すぎるから難しいな……。いや、別に自慢してるわけじゃないんだ。事実だから仕方ないだろう(笑)。ただ、代表の一員として決めたアシストの中にはすごく印象深いものがある。ドイツ・ワールドカップの準々決勝、ウクライナ戦でのアシストだ。ショートコーナーからのクロスで、最高のタイミングで最高のボールを蹴ることができた。絶妙なクロスを(ルーカ)トーニがしっかりと決めてくれたよ。

そのクロスだけど、どんなタイミングでどんなボールを蹴ったのかを説明してくれるかな?

トッティ ショートコーナーでタイミングをずらした時、CKにしてはエリア内にいるイタリアの選手が少なかったから、ウクライナのDF陣が油断して棒立ちになった。トーニはその一瞬を逃さず、ファーサイドから中央に動き始めたんだ。実際には動き始めるよりコンマ何秒か前だと思うけど、俺はそれを察知してクロスを上げた。GKが飛び出せないよう、外から巻いてファーポストに向かって落ちるようなカーブを掛けてね。すべてが完璧なゴールだった。

君はファンタジスタと呼ばれる通り、ファンタジーア(創造性)豊かなプレーヤーで、特にパサーとしてのプレーは意外性に溢れている。誰にも予測できないコースへのパスは、頭で考えているのか、完全な“ひらめき”なのか、どっちだろう?

トッティ 完全な“ひらめき”というのはほとんど存在しない。さっきも言った通り、パスを出す前の時点で、できるだけ多くの情報を仕入れておこうとする。“ひらめき”はその素材を集約してパスのコースや種類を決定する時のエッセンスのようなものかな。つまり、両方が機能することもあるけど、頭で考えるケースのほうが多いということさ。

君のようなパサーになるにはどんな練習をすればいい?

トッティ 残念だけど、特別な練習は存在しない。テクニックの上達に近道はないんだ。同じ練習でもゴールマウスにGKを立たせてシュート練習するほうが面白いよ。だけど、壁に向かって地道にボールを蹴り続けることも重要なんだ。そこで大事なのは「これぐらいでいいや」って思わないこと。常に「もっとうまくなりたい」って思わなきゃならない。その点、俺は優秀だったよ(笑)。

最後に、君のような選手になりたくて練習しているサッカー少年たちにアドバイスをもらえるかな?

トッティ まずサッカーを楽しむこと。サッカーはあくまで“遊び”だ。楽しんでいるうちに上達していって、その結果としてプロサッカー選手になれれば最高だ。でも、子供の頃からプロを意識しても、気持ちが続かないと思う。ただ楽しみながらサッカーに打ち込むことが大事なんだ。そして、どこかのタイミングで自分がプロサッカー選手になれると思った時には、そこからは他の楽しみを忘れてサッカーに専念すること。自己犠牲なくしてプロ選手は務まらないからね。

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