中国・米利上げなどで日本経済に失速リスク=原田日銀委員

中国・米利上げなどで日本経済に失速リスク=原田日銀委員
11月11日、日銀の原田泰審議委員は、中国経済を中心とした新興国経済の一層の減速などが日本経済を失速させるリスクがあると指摘した。3月撮影(2015年 ロイター/YUYA SHINO)
[宇都宮 11日 ロイター] - 日銀の原田泰審議委員は11日、現行の「量的・質的金融緩和(QQE)」政策について、所期の効果をあげているが「中国経済を中心とした新興国経済の一層の減速、米利上げが思わぬショックをもたらす可能性、欧州債務危機の再燃など日本経済を失速させるリスクがある」と指摘。
雇用が悪化し、基調的な物価上昇が難しくなれば「ちゅうちょなく追加緩和が必要」と強調した。就任以来初の講演を宇都宮市で行った。
<物価、当初考えたように上がっていない>
原田氏は大規模な金融緩和を主張するリフレ派の論客。日銀が政策運営の目安とする消費者物価指数(CPI)で生鮮食品を除いたコアCPIがマイナス圏で推移しているにもかかわらず追加緩和を見送るなか、その見解が注目されていた。
講演では、コアCPIの下落は「エネルギー価格低下によるもので、エネルギーと生鮮を除いた物価(日銀型コアコアCPI)でみると、着実に上昇している」と強調。「当初考えていたように物価は上がっていないが、物価だけ上がって雇用が増えていなかったら大失敗」と指摘し、「経済全体の需給が締まってくるなか、いずれ物価も上がってくる」、「本年度末には消費者物価が2%に向けて上昇していることが確認できる」と強調した。
QQEで賃金が上がらないとの批判に対して「時給は上がっている」と反論。雇用は増えているためQQEは「大成功」と評価した。
<中国統計に疑問あるが、それほどの過大推計でない>
中国経済については「統計に疑問がある」としつつも、中国経済と相関の大きい台湾や韓国などから推測すれば、「中国の生産統計がそれほど過大に推計されている訳ではない」との見解を示した。
日本の対中輸出は「さらに大きく低下することはない」としつつ、「低下がさらに大きなものとなれば、輸出の現象が生産の減少に及ぼし、雇用も悪化する可能性がないわけではない」と警戒感を示した。
<消費増税、物価押し下げる>
消費については「消費税増税の影響はかなり大きい」とし、実質所得減少の影響を懸念。日銀の公式見解では「底堅い」としている消費の現状について「直近、懸念される動きがあるように思え、生産についても同様の状況」と語った。
消費税に関しては「引き上げが消費需要を減らし、物価を引き下げる効果があるが、多くの議論でこのことが忘れられている」と述べ、財政再建論者の黒田東彦総裁とは異なる見解をあえて示した格好だ。
また、大規模な金融緩和が財政規律を弛緩させているとの批判には「増税しても、収入が増えれば使ってしまうから同じだ」と反論した。
*内容を追加します。

竹本能文 編集:山川薫

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