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任務の重み 積極発信 加治屋・小松基地司令 着任4カ月

2020年8月14日 05時00分 (8月14日 10時20分更新)
日本海側の防衛最前線の部隊指揮官として責任の重さを感じると話す加治屋秀昭司令=小松市の航空自衛隊小松基地で

日本海側の防衛最前線の部隊指揮官として責任の重さを感じると話す加治屋秀昭司令=小松市の航空自衛隊小松基地で

地元の協力団体ありがたい


 日本海側唯一の戦闘機部隊を持つ航空自衛隊小松基地。千八百人の隊員を束ねる長として、加治屋秀昭空将補(54)が着任して四カ月余。市中で新型コロナウイルス感染が収まらない中、基地司令としての思いや小松市の印象などを聞いた。(聞き手・坂麻有)
 −秋の航空祭を中止した。
 感染リスクなどを総合的に判断した。多くの方が楽しみにされていたが苦渋の決断。基地には単身や家族連れで隊員約六百人が住む。感染した場合の隔離施設は確保したが、まずはマスク、手洗いなど基本を徹底させている。感染者が出た場合は勤務、時間、場所を区切るなど多様な方策を取る。
 −着任して四カ月余りが過ぎた。
 もともと戦闘機乗り。実際に飛んでいる姿を間近に見られ非常にうれしい。小松は地政学上、重要な基地。日本海側の防衛の最前線の部隊指揮官として責任の重さを感じる。大きな変化の時を迎えていて、日本を取り巻く周辺国の軍事的活動が非常に活発化している。活動エリアも拡大し、安全保障環境は厳しさを増している。
 −緊急発進(スクランブル)はどうか。
 四〜六月は百九十六回。例年より若干少ないが、コロナの影響はないとみている。対領空侵犯はロシアと中国で、中国機が七割。両国とも東シナ海をはじめ、あらゆる所で活発に活動している。昨今、中国機は沖縄と宮古の間を通過し西太平洋に入る。両国とも対馬海峡を通って日本海に進んでおり、対応している。
 −なぜパイロットになったのか。
 大阪の伊丹空港近くに親戚がいて、小学生の頃、よく見に行くなど空を飛ぶ憧れがあり、進路に防衛大を選んだ。憧れて自分で入ったが結構、厳しい世界。当時は訓練中の事故が多く、仲間や先輩が殉職され、大きな衝撃を受けた。明日は自分の身に起こるかもと。
 前任地の浜松基地では団司令として操縦課程を修了した後輩の学生の制服の胸に一人前のパイロットの証しのウイングマークを着けた。自分も苦労し、思い悩んで努力し、着けてもらった三十年前がよみがえった。
 −部隊の育成は。
 対戦闘機訓練するアグレッサー部隊という飛行教導部隊がある。小松基地は空自の戦闘機部隊で常に先を行くというか、隊員も戦技戦法を高める気概が高い。日本海という訓練空域もあり、世界標準のハイレベルな部隊にせねばならない。
 −飛行差し止めなど訴訟も抱える。
 小松基地は対領空侵犯措置など日本の防衛上、必要不可欠。住民の皆さまには防衛の実情、任務の重要性を理解してもらえるよう説明していくしかない。基地は閉鎖的な組織と思われがちだが、講演要請があれば応え、インターネットでも積極的に発信していきたい。その反応から新たな学び、気付きが得られる。
 −小松市の印象は。
 自然豊かで風光明媚(めいび)。霊峰白山や広大な日本海に癒やされる。九谷焼に代表される工芸、歴史的町並み、史跡が多く、伝統文化を大切に育んでいる。基地を題材にしたアニメや「小松基地空揚(からあ)げ」を売る店などもあり、ありがたい。基地の協力団体も多く、運営への理解、温かい支援もあり、恵まれている。
 −隊員に求めることは。
 航空自衛隊の任務は多様化し、宇宙まで広がっている。常識にとらわれない、自由な発想が必要。人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、ドローンなどの先進技術で社会も変わってきた。われわれもどう防衛力に生かすか考えないといけない。

【プロフィール】かじや・ひであき=1966年2月生まれ。愛知県東海市出身。防衛大32期。第8航空団第6飛行隊長(築城基地)、第2航空団飛行群司令(千歳基地)、航空総隊司令部防衛課長などを歴任。中高生時代はバスケットボール部。趣味はゴルフ。洋ランなど花を育てることも好き。54歳。


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