霞ケ浦の「厄介者」外来魚を魚粉化 飼料や肥料に 来年度の事業化目指し、茨城県が実証試験

2023年5月16日 07時52分

アメリカナマズ(県提供)

 茨城県は、霞ケ浦で取れるものの従来利用されてこなかった外来魚を魚粉に加工し、飼料や肥料として活用する実証試験に乗り出した。二〇二四年度の事業化を目指す。「厄介者」の外来魚を減らすことで、ワカサギなどの主要な水産資源を保護するとともに、漁業者の新たな収入源にもつなげる一石二鳥を狙う。(青木孝行)
 「商品化できるなら、漁業者にとっていいこと。コイの成長に見合った価格なら使いたい」。かすみがうら市でコイの養殖を手がける桜井隆士(たかし)さん(58)は、県の取り組みに期待のまなざしを送る。
 県漁政課によると、一九四〇年代にハクレンが、七〇年代にはアメリカナマズが、それぞれ食用魚として霞ケ浦に移入された。だが日本人の味覚に合わず、食卓には広まらなかった。
 県は、魚の養殖などでエサの配合飼料に使われる魚粉が、新型コロナ禍や円安の影響で高騰していることに着目。未利用の外来魚を魚粉の原料にする道を探り始めた。
 実証試験は霞ケ浦の北浦で実施。ハクレンは刺し網漁で、アメリカナマズはトロール漁(底引き網漁)や定置網漁で捕獲する。その後、民間企業が魚粉として商品化する計画だ。北浦流域の養殖業や畜産業で飼料に用いるほか、メロンなどの果樹栽培の肥料としての使い道を想定している。

ハクレン(県提供)

 北浦の主要な水産資源の漁獲量は、シラウオがほぼ横ばいで推移する一方、ワカサギとエビ類は一九七八年以降、減少が著しい。ワカサギは最盛期の八四年には千五百七十トンだったが二〇二一年は三十五トンに、エビ類は七八年に四千七百六十三トンを記録したが二一年は三十七トンまで落ち込み、それぞれ過去最低となった。
 漁政課は、ワカサギは高水温に弱く、ここ数年の夏場の高い気温が悪影響を及ぼしたと指摘。エビ類については、生息場所となる水生植物の減少と、アメリカナマズなどの「天敵」の増加を要因に挙げる。
 これに比例するように、漁師の数も減少。農林水産省が五年ごとに公表する「漁業センサス」によると、霞ケ浦一帯の漁業従事者は〇八年に七百二十五人いたが、十年後の一八年には三百二十六人と半数以下になっている。
 同課の担当者は、外来魚を捕獲して活用することで「ワカサギなどの漁獲量減少を食い止めるとともに、課題となっている漁業者の収入安定にもつなげたい」と意気込む。

関連キーワード


おすすめ情報

茨城の新着

記事一覧