山崎正和さんが死去 劇作家・評論家、86歳
戯曲「世阿弥」や評論「柔らかい個人主義の誕生」で知られる劇作家・評論家で文化勲章受章者の山崎正和(やまざき・まさかず)さんが8月19日午前3時2分、悪性中皮腫のため兵庫県内の病院で死去した。86歳だった。告別式は近親者で行った。
京都市生まれ、京都大大学院修了。後に米エール大に留学。1963年、能楽の大成者を主人公とする戯曲「世阿弥」で演劇界の登竜門である岸田国士戯曲賞を受賞、気鋭の劇作家として注目される。演劇、小説、詩など幅広い分野の評論も手がけ、73年には森鴎外を新たな視点で論じた「鴎外 闘う家長」で読売文学賞を受賞する。
84年発表の評論「柔らかい個人主義の誕生」(吉野作造賞)では、当時起きていた日本の消費社会の変化を取り上げ、「顔の見える大衆」の登場を肯定的にとらえた。それは「社交する人間 ホモ・ソシアビリス」(2003年)などの文明論へとつながっていく。他の著書に「文明としての教育」「世界文明史の試み 神話と舞踊」などがある。
劇作家としても、ギリシャ神話に基づく「オイディプス昇天」、米国の女性写真家マーガレット・バーク=ホワイトの生涯を描いた「二十世紀」などの話題作を相次ぎ発表した。阪神大震災のあった95年には、ナチスによるリトアニアでのユダヤ人虐殺の史実に基づく「GHETTO/ゲットー」を神戸市で上演、大きな反響を呼んだ。
日本古来の伝統と欧州の演劇を結びつける戯曲と、鋭敏な感受性に裏打ちされた評論はともに高く評価された。
関西大教授、大阪大教授、米コロンビア大客員教授などを経て、00年から05年まで東亜大学長。07年から09年まで文部科学相の諮問機関である中央教育審議会の会長も務めた。06年文化功労者、18年文化勲章。
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