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つながらない権利、世界各国が法制化 日本は動きなし ニット広報/オンラインファシリテーター 小澤 美佳

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法整備待たず可能な対策を

一方、日本国内でも勤務時間外のメール対応を禁止する企業も出てきている。働き方改革が意識され、企業で労働環境を見直す動きが増えている。ジョンソン・エンド・ジョンソンは午後10時以降と休日の社内メールのやり取りを禁止した。三菱ふそうトラック・バスは長期休暇中にメールを受信拒否・自動削除できるシステムを導入した。

諸外国のような法制化の動きがないのなら、企業としてルールを整備することをお薦めしたい。可能な対策は以下の通りだ。

(1)管理職への教育・研修で意識改革を促す

長時間労働が当たり前だった時代を経験してきた「上司」の立場にいる人の意識を変える必要がある。上司が部下に対して勤務時間外に連絡をしなければ、つながらない権利の侵害は起きにくい。

(2)取引先との契約内容に明記する

業務時間外に上司からの連絡がなくても、取引先からの連絡があっては意味が無い。取引先とのルールでも明文化しておくといいだろう。「〇時以降の連絡は翌日対応」といった体制作りから始める必要がありそうだ。

(3)単純なルール作りから

難しく考えなくても、「〇時から〇時までのチャット送信は禁止」「受信したメッセージには翌就業時間まで対応しない」といった簡単なルールを設けるだけでも社員の意識は変わるだろう。

注意したいのは、明確な社内ルールや指示によって「つながる」ことを強要しているわけではなくても、結果的に「つながり続けている」かもしれないということだ。企業として放置することは「黙認」とみなされ、待機時間を労働時間と判断される可能性すらある。特に経営者や人事担当者はこのような意識を持つことが重要だ。

柔軟な働き方できる環境に

柔軟な働き方を可能にしたリモートワークの普及は、その利便性とは裏腹に仕事と私生活の区切りをつけづらく、オーバーワーク促進に加担する危うさを持ち合わせる。

まずは、つながらない権利について自分自身が問題意識を持つことが重要である。組織のメンバーや家族と議論を重ね、自分らしい働き方につなげていくことが大切だ。それを実現する社員の就業を阻害することのないよう、社員同士がお互いに十分に配慮できる環境作りが望ましい。

小澤 美佳(こざわ・みか)
(株)knit(ニット)広報/オンラインファシリテーター
2008年リクルート入社。10年間、HR一筋。中途採用領域の代理店営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で、キャリア・就職支援の講演を実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。18年、中米ベリーズへ移住し、現地で観光業の会社を起業。19年にニットに入社し、営業・広報・人事を経験後、現在はオンラインファシリテーターとしても活動中。

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