香港の反「国民教育」、勢い増す 政府も譲歩
【香港=川瀬憲司】香港で中国本土と同じような愛国心を養うための「国民教育」への市民の反発が広がっている。9月から一部の小学校で試験導入されたが、学生から高齢者まで幅広い層の市民がデモやハンストに参加。香港政府は態度を軟化させているが、7日夜には全面撤回を求める市民らによる大規模抗議集会が開かれた。
「国民教育」を巡っては、共産党体制の下の中国政府を「進歩的で無私、団結した執政集団」などと礼賛する一方、米国などの多党制民主主義は「政党同士の闘いが人民に災難をもたらす」などと記述した教育指導用冊子の存在が明らかになった。批判が広がり、9日投票の立法会(議会)選挙の最大の争点にも浮上している。
香港では近年、中国政府の影響が強まる傾向にある。とりわけ、7月に就任した香港政府トップの梁振英(C・Y・リョン)行政長官は「国民教育」問題への対応だけでなく、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を目指した香港の抗議船出航を事実上容認している。香港の高度な自治を約束した「一国二制度」の形骸化を危ぶむ声もある。