第76回菊花賞回顧~ディープを封じるブラックタイド、Halo≒Sir Ivorを封じるBurghclere

2015-10-26 11:01:16 | 血統予想

京都11R 菊花賞
◎7.スティーグリッツ
○17.リアファル
△9.アルバートドック
×5.ベルーフ
リアファルは配合パターンや母系からスタミナは保証つきだが、パワー型で京都で上がりが速くなりすぎるとどうかというところはあるだろう。リアルスティールは母方のマイラーっぽさが出た体型や加速で、だからこそ皐月賞で持ったまま4角先頭ができるのだ。スティーグリッツはキングストレイルの甥で、シンコウラブリイやコディーノでおなじみのハッピートレイルズの牝系。母サンタフェソレイユは芝1200mのフェアリーS2着がある。この牝系は牝馬は前向きな気性のマイラーが多いが、牡馬はトレジャー(目黒記念2着)やハッピールック(ダイヤモンドS2着)のようなスタミナ豊富なタイプも出る。父ハービンジャーはキングジョージの勝ち馬で、産駒もトーセンバジルやマッサビエルが2400m級に延びてパフォーマンスを上げてきた。しかも本馬はオリオール≒アルサイド7×6・7など父母のスタミナの血をクロスしていて(これはマッサビエルも同じ)、やはり距離延長とともにレース内容が良くなってきたし、燃費の良い走りで長距離は合っているはず。「父スタミナ×母スピード」の配合形なので、途中から動いていける機動力を持ち合わせているのもよく、4角では好位に取り付いているとみた。ハービンジャー3騎から◎を選ぶならば、母が最もスピード型のスティーグリッツ。今年の菊の予想はこれでいきたい。ベルーフはステイゴールドやサッカーボーイの牝系だけに押さえたいところ。アルバートドックは母系のハイペリオン的粘着力が強い体質脚質で、ひと叩きで折り合えばディープ産駒で最もスタミナを発揮する可能性がある。

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キタサンブラックは「父中距離×母父スプリンター」の配合なので機動力があって好位で自在に立ち回れるのがまず強みで、またもともと父ブラックタイドに似た中距離体型でしたが、秋になって更に体型に伸びが出てきたのはフォトパドックを見比べれば明らかでした

しかも母がPrincely Gift系×Bold Ruler系で自身はWild Riskのクロスなので前肢がしなやかにきれいに伸び、京都外回りコースをスムーズに下ってこれる走法でもあります
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012102013/

4角からロスなく捌いたのは鞍上の好プレーですが(ああいうイン捌きは北宏の真骨頂ですよね)、4角~直線半ばにかけての加速はこの馬が最も速く、今年の菊も「一番前肢がきれいに伸びる馬」が叩き合いを制することとなりました

「母父サクラバクシンオーが菊花賞を勝ってしまってエエんかい!」という向きには、ホワイトマズル×ジェニュイン全妹のアサクサキングスとか、バゴ×スプリンターのビッグウィークが菊を勝ったのとまあまあ同じようなもんで(金曜のエントリでも書きました)、父が重厚なスタミナ型であればあるほど母からスピードを注入する必要があるわけで、母のスピードで先行したり好位で立ち回れるからこそ父のスタミナが100%活きるのです

私がハービンジャー3騎の中でスティーグリッツをチョイスしたのも、母が最もスピード型だからというのが主な理由で、大きく出遅れてしまいましたが勝負どころで最後方から一気に押し上げてきたあの脚、ああいう脚を使えるのは母がマイラーだからこそでしょう

だから母父サクラバクシンオーが菊花賞を勝つことに大きな驚きはなく、それよりも長距離G1を勝ちきるだけのスタミナや底力を父ブラックタイドが脈々と伝えたのだということがまず賞賛されるべきかと

もうすでに種牡馬としての優秀さは認知されていて今年は200頭近くに種付けしたようですが、この菊花賞制覇で更に人気沸騰は必至でしょう

デビューから武豊とコンビを組みつづけ、新馬と若駒Sを4角2番手で勝ってエリートコースに乗ったブラックタイドは、スプリングSでは一転した後方一気、いわゆるノリのポツンで、鮮やかに追い込みを決めてクラシックの最有力候補に浮上しました

しかし2番人気で出た皐月賞は後方のまま惨敗、そこからまる2年の長い休養に入ってしまい、復帰後はずっとオープンで走って[0.3.3.10]と3歳時の輝きを取り戻せないまま競走生活を終えました

当時から「サンデー×Lyphard×ハイインローは、前で受けてこそ粘着力が最大限に活きる」説を唱えていた筆者としては、ブラックタイドもBurghclereの重厚なスタミナを活かすにはもっと前で受けるべきではないかと予想のたびに書いていて、エイシンデピュティの逃げ切りを和田が番手で追いかけたオーストラリアT2着、復帰後ではあれが最も輝いたレースといえるかも

そもそもサンデーサイレンス×ウインドインハーヘアという配合は、キレッキレのディープインパクトよりも粘着型ブラックタイドのような馬のほうが出やすい配合というべきで(それは全弟オンファイアや近親のゴルトブリッツやリルダヴァルを見ても明らか)、ハーツクライやバブルガムフェローのような脚質に完成するはずだった中距離馬が、ヘンタイプレーで最後方から追い込んでスプリングSを勝ってしまい、実はあそこから歯車が狂いはじめたのかもしれません

全弟ディープインパクトがスーパースターとして一世を風靡した後も、こんなはずではなかったという思いを引きずりながらオープン特別を彷徨いつづけ、引退後は半ば弟の威光でひっそりと種牡馬入りしたブラックタイドは、しかし毎年重賞勝ち馬を送り出して着実に評価を上げていきます

Halo≒Sir Ivor譲りのしなやかな体質と鋭敏な斬れ味、そしてSir Ivorのフィリーサイアーとしての資質も受け継いだディープインパクトが牝駒に抜群の斬れ味を伝えて大成功しているのに対し、ブラックタイドは種牡馬としても「サンデー×Lyphard×ハイインロー(Burghclere)」の粘着力持続力を主に伝えていて、「しなやかで女性的なディープ」「泥臭く男性的なブラックタイド」と、全兄弟でもキャラが真逆なのが面白い

これまで輩出した重賞勝ち馬4頭は全て牡で、全7勝のうち4角先頭が三つに4角3番手が一つ、活躍産駒の母父がサクラバクシンオー、キングカメハメハ、グラスワンダー、アフリート、Danzig、Distant View、スウェプトオーヴァーボード、「母のスピードで先行し、父のスタミナで泥臭く粘る牡駒」が活躍しているのです

ブラックタイドが前で受けて、ディープインパクトの追い込みを封じる
Burghclereのスタミナを振り絞って、Halo≒Sir Ivorの斬れ味を封じる

サンデーサイレンス×ウインドインハーヘアの血統表はどこから見ても美しく、発現の仕方は違えども、その美点はディープインパクトにもディープインパクトの産駒にも、ブラックタイドにもブラックタイドの産駒にも伝わっているのだということを、ライヴで体感することができた今年の菊花賞でした

リアルスティールは今日もカベをつくって折り合うことができたし、福永祐一としてはまずは思惑どおりのレース運びだったと思いますが、キタサンが上がり35.0でリアルが35.1、スプリングSも皐月賞も上がり3Fでは上回っていたのにここで伸び負けたのは、京都外回り適性だけでなく長距離適性でもキタサンが上回ったからと考えるべきでしょう

でもこの2着は、エアシャカールの1着やドリームパスポートの2着やネオユニヴァースの3着なんかと匹敵するもので、母系のマイラーっぽい加速が表現されたピッチ走法はジェンティルドンナを思わせると書いてきましたが、1800~2000mならばドゥラメンテに次ぐ能力の持ち主であることを改めて証明したといえるし、2400mでもスローならばジェンティルのようなパフォーマンスを発揮できる可能性をも示した内容だったのではないかと

神戸新聞杯もマレーシアCもゴール前の上がりは11.7で、今日が11.6ですからリアファルは同じぐらいの脚で上がっているとも言え、最後も決して止まったわけではなく斬れ負け鋭さ負けという3着で、ゴール板をすぎてからの勢いや脚色はキタサンよりもリアルよりもリアファルのほうが良かった

配合や母系から3000mのスタミナに不安ないと書きましたが、一方でラトロ肩で掻き込んで走るこの馬が高速馬場の菊花賞を勝ちきるには、(やはりラトロ肩で掻き込んで走っていた)ザッツザプレンティが斬れ味不足をカバーするために、通過順位8-9-3-1、上がり4F11.8-11.5-12.0-12.3というロンスパで2000mベストのネオユニヴァースやゼンノロブロイに脚を使わせたような、ああいう発想も必要ではないかと考えられました

だから康太がレースを動かしてノリがハナに立ったときにインのポケットにおさまってしまい、直線まで追い出しを待たされることになったのが誤算といえば誤算で、あれが外3ならばルメールはもう少し長く脚を使うようなスパートで、神戸新聞(12.0-11.0-11.4-11.7)と同じようなスパートできたんじゃないかと

スティーグリッツは残念なレースでしたが、4角ではこの馬もマッサビエルも大外にいて、あれはやっぱりAureole魂を感じさせるレース運びでもあったかもしれません


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7 コメント

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Unknown (れっつ豪州)
2015-10-26 11:14:27
父を競走馬として上回った以上
スタッドインを目指してほしい、と思うので
トウケイヘイローのレース選択肢で
海外を視野に入れた厩舎にいるのは朗報だし
クランジやシャティンはもちろん
コーフィールドとかフレミントンも
操作性に優れて末もしっかりした馬が
狙いすませる舞台だと思うので
(個人的にはコックスプレート勝ちたい)
次走が暮れの中山だとしてもまあ仕方ないけど
その先のローテーションがどうなるか
見守っていきたいっす。
Unknown (Unknown)
2015-10-26 12:00:02
わずか2完歩ほど、直線の進路選択で後れを取ってしまったのが最大の敗因だと思います
クビ差だっただけに大きな2完歩でしたが、あそこでスッと反応できるかどうかの違いなんでしょうね
とはいえ、北村は120点の騎乗でしたからリアルスティールには君のほうが強い競馬だったといってあげたい
Unknown (MJ)
2015-10-26 12:01:40
沙田の2000m、なかなか合ってると思います(・∀・)
Unknown (L&L)
2015-10-26 12:02:57
リアルスティールは向正面で他馬の動きに過敏に反応した分の負けだと思いますが、その「過敏に反応した」という一流馬によくありがちな共通する要素がある意味では今回のメンバーの中では一頭別格だったことを裏付けるのかなと。
ブラックタイド (やっぱり君)
2015-10-26 18:07:41
あの長欠の原因はただの成績不振ではなく脚の故障でしたもんね。
確か2歳の時に同時期のディープインパクトよりも速い時計を記録したことがあったように思います。
産駒への影響の与え方は全弟とはまた違いますがそこもまたこの馬の魅力ですよね。
Unknown (ヴィラヴィタ)
2015-10-28 08:46:12
これだけブラックタイド産駒が活躍し、数も増えると、いずれ出てくるディープインパクト=ブラックタイドの全兄弟クロスが楽しみになりますね。果たしてどういう効果になるのか…
Unknown (MJ)
2015-10-28 10:22:38
ウインドインハーヘアは名血で好配合で一流の競走馬で名繁殖牝馬ですから、これを含むクロスは非常に魅力があります(・∀・)

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