トンガ噴火の潮位変化 音速に近い「ラム波」が影響 気象庁報告書

衛星がとらえたトンガ沖の海底火山噴火の様子=1月15日(CIRA/NOAA提供・ロイター)
衛星がとらえたトンガ沖の海底火山噴火の様子=1月15日(CIRA/NOAA提供・ロイター)

気象庁は7日、今年1月15日に発生したトンガ沖の海底火山の噴火に伴う潮位変化に関する報告書をまとめた。潮位変化のメカニズムは詳細を解明できていなかったが、噴火で大気が急激に膨らみ気圧の変化が生じた結果、気圧の波の一種で音速に近いスピードの「ラム波」が発生、海面に伝わったことなどにより潮位変化が起きたとの見解を示した。今後同様の噴火が発生した場合、潮位変化の開始時刻の予測が可能になり、事前に注意を呼びかけられるようになる。

トンガ沖の海底火山は15日午後1時ごろに噴火し、同日午後8時ごろから翌16日未明にかけて、津波に似た現象の「潮位変化」が発生。鹿児島県奄美市で1・2メートル、岩手県久慈市で1・1メートルなど太平洋沿岸を中心に潮位上昇が観測された。

気象庁は潮位変化が起こる直前、トンガ方面から日本列島に向けて約2ヘクトパスカルの気圧上昇の波を確認していたが、潮位変化が通常の津波より早い時間に到達しており、はっきりとしたメカニズムは分かっていなかった。

気象庁は2月以降、有識者を交えた勉強会を開催。その結果、潮位変化をもたらした気圧波は、「ラム波」と呼ばれる大気と海面や地面との間に生じる境界波であると結論づけた。ラム波は大規模な火山噴火で発生、音速より少し遅い毎秒約310メートルで進み、遠くへ進んでも速度が減衰しにくい特徴を持つ。

このラム波が海面を押したことなどで潮位変化が発生したとみられる。同庁は、このほかにも日本沿岸部の複雑な地形など複合的な要因が影響した可能性があり、さらに分析が必要としている。

同庁はこれまで、噴火による潮位変化の到達予想時刻は「不明」としていたが、メカニズムの解明が進んだとして、今後は噴火地点から日本までの距離と、気圧波の速度から算出した潮位変化の到達時間を発表する。潮位変化の高さの予測は「現時点では困難」とし記載しない。

気象庁はこうした呼びかけのあり方について、今年度、有識者による検討会を開き、「さらに改善する」としている。

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