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穏健中道派「一本化」で「バイデン優位」となった民主党指名争い
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足立正彦

 【ワシントン発】民主党大統領候補指名獲得争いは、多くの民主党関係者や政治専門家、メディアらが予想していなかった展開となり、流れが一挙に大きく変化しつつある。

 民主党大統領候補指名獲得争いが現在のかたちとなった1972年以降、指名を獲得したすべての候補は、アイオワ州党員集会で3位以内、ニューハンプシャー州予備選挙で2位以内に必ず入っており、2つの州で惨敗したジョー・バイデン前副大統領は、指名獲得がほぼ不可能との見方で政治専門家などは一致していた。

「スーパーチューズデー」で異変

 ところが、7月13日から16日までの4日間ウィスコンシン州ミルウォーキーにおいて開催される「民主党全国党大会」に出席する合計3979名の「誓約代議員(pledged delegate)」の34%に相当する1357名を選出する14州などで予備選挙が一斉に行われる「スーパーチューズデー」が3月3日に行われたが、ここで大異変が起きた。直前まで劣勢であったバイデン氏が急浮上したのである。

 具体的には、テキサス州(「誓約代議員」228名)、ノースカロライナ州(同110名)、バージニア州(同99名)、テネシー州(同64名)、アラバマ州(同52名)、オクラホマ州(同37名)、アーカンソー州(同31名)の南部7州すべて制して完勝するとともに、マサチューセッツ州(同91名)、ミネソタ州(同75名)、メイン州(同24名)でも勝利し、合計10州で勝利を収めた。

 前週の2月29日(土)に行われたサウスカロライナ州予備選挙後に撤退し、バイデン氏支持を表明したエイミー・クロブチャー上院議員の選出州であるミネソタ州予備選挙で勝利し、そして、左派のエリザベス・ウォレン上院議員の地元マサチューセッツ州予備選挙でもバーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州選出)、ウォレン両候補を振り切って勝利したことが、バイデン氏に「弾み」をつけることとなった。

 他方、「スーパーチューズデー」までは「序盤州(early states)」の2戦目ニューハンプシャー州予備選挙と3戦目ネバダ州党員集会で連勝し、「誓約代議員」獲得数で先頭を走っていたサンダース氏は、「誓約代議員」の数が全米50州で最大の415名を抱えるカリフォルニア州や地元バーモント州(同16名)、コロラド州(同67名)、ユタ州(同29名)の4州で勝利したが、バイデン氏は「誓約代議員」の獲得数でサンダース氏のそれを上回り、バイデン氏が大統領候補指名獲得争いを主導する展開となった。

 サンダース氏は保護主義的貿易政策や大企業や富裕層に対する課税強化、各種規制の強化などを公約に掲げて訴えており、「スーパーチューズデー」の前から自由貿易が概ね支持されている南部諸州では、サンダース氏の保護主義的貿易政策をはじめとする一連の政策は不人気であり、苦戦は予想されていた。

 だが、サンダース氏にとって誤算だったのは、事前の各種世論調査で優勢と見られていたテキサス州、メイン州、選出州バーモント州の隣接州であるマサチューセッツ州、ミネソタ州での相次ぐ敗北であった。

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