三島由紀夫、ノーベル文学賞最終候補だった 63年
小説家の三島由紀夫(1925~70年)が1963年に初めてノーベル文学賞の候補になっていたことが3日、選考主体のスウェーデン・アカデミーの新資料で明らかになった。三島は「技巧的な才能」に注目され、最終選考の対象となる6人の候補まで残っており、受賞に非常に近い位置にいたことが裏付けられた。
三島が文学賞候補だったことは、共同通信の請求に応じて同アカデミーが開示した資料で初めて正式に確認された。資料によると、63年の文学賞候補は計80人。三島の他に小説家の谷崎潤一郎と川端康成、詩人の西脇順三郎も名を連ね、日本人4人が候補となっていた。
当時の選考委員会のエステリング委員長は三島について「日本人候補者の中で最も大きな受賞のチャンスがある」と高く評価。「今後の発展を継続して見守っていく必要がある」とコメントしていた。
三島の推薦者は、日本文学を含む東洋学者として知られた米エール大のヨハネス・ラーデル教授。三島は、受賞者決定直前に絞り込まれた3人の中には入っていないものの、選考委員会による詳細な検討対象となる最後の6人に残っていた。
選考委員会はまた、川端について「賞を与えるには時期尚早」、谷崎については「日本の意見では文学界の重鎮として確固たる地位にあるというが、委員会は残念ながら違う考えを持っている」と記していた。西脇については具体的なコメントはなかった。
63年のノーベル文学賞は三島を含む6人の候補のうち、ギリシャの詩人、イオルゴス・セフェリス、英国出身の詩人、W・H・オーデン、チリの詩人、パブロ・ネルーダ(71年受賞)の3人に絞り込まれ、最終的にセフェリスに授与された。
ノーベル賞の候補者名や選考過程は50年間にわたり非公開となっている。68年に文学賞を受賞した川端は61年と62年、谷崎と西脇は58年と60~62年にも候補になっていたことが、これまでに開示された同アカデミーの資料で判明している。(ストックホルム=共同)