社説

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 さまざまな価値観を持つ人が生きやすい社会をつくるためには「決めつけ」を排し、選択肢を広げることが極めて重要だ。

 日本は夫婦に同姓を義務付ける世界でもまれな国である。しかし、時代とともに強制をやめてほしいとの声が広がり、今や選択的夫婦別姓を容認する国民は幅広い年代で多数を占めるまでになった。

 婚姻前の名字を引き続き使えず仕事に支障が出ている、実家の姓が絶えるので結婚に踏み切れない-。こうした理由で実際に困っている人がいる。未婚化や、ひいては少子化の一因になっているとの指摘もあり、見過ごせない。

 政府、与党は国民の変化にしっかりと向き合い、夫婦別姓を巡る法改正の議論へ一歩踏み出すべきだ。

 現在、今後5年間の女性政策をまとめた「第5次男女共同参画基本計画」の策定に向けた議論が自民党内で行われている。夫婦別姓の記述を巡り、賛成派と反対派が激しく対立している状況だ。

 政治は20年以上も問題を放置してきた。1996年、法制審議会は選択制を認める民法改正案を答申したが、法改正は棚上げされた。

 2015年には最高裁が夫婦同姓を合憲としつつも「国会で論ぜられるべき」との判決を出した。ところが、やはり進展しなかった。怠慢はもう許されない。

 最高裁は先日、夫婦同姓を定めた民法の規定は違憲だと訴えた3件の家事審判の特別抗告審について、大法廷で審理すると決めた。改めて憲法判断を示す可能性がある。

 これからの社会を担う若い世代の意向は特に尊重されるべきだろう。

 30歳未満の若者によるプロジェクト「#男女共同参画ってなんですか」は先ごろ、夫婦別姓の実現を求める約3万筆の署名を橋本聖子男女共同参画担当相に提出した。内閣府の17年調査によると、夫婦別姓への賛成は、反対の29・3%を大きく上回る42・5%に上り、18~39歳では50%を超えた。

 自民党などの反対意見で目立つのは「家族の絆や一体感が失われる」である。同姓にすることで一体感を得られると思う人は、そちらを選べばいい。だが、家族観は一様ではない。望めば別姓を選べるようにするのは政治の責任といえる。

 夫婦同姓を日本古来の伝統のよううにとらえる向きがあるが、それは違う。ドイツを手本に、1898(明治31)年に導入された。

 しかしそのドイツも1993年の法改正で選択的別姓となった。日本でも家族のあり方や国民の意識は確実に変わっている。今こそ、柔軟に考えるときである。

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