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【北の富士コラム九州場所展望】V候補筆頭は安定感で貴景勝 御嶽海も頑張れば10勝は難しくない

2022年11月12日 05時00分

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貴景勝

貴景勝

 コロナの感染者がまた増えてきた。今年の九州場所はあれも食べよう、これも食いたいとやる気いっぱいだったが、急速に意欲が薄れてしまった。予定ではもっと早く九州入りしているところだが、まだ東京にいてこの原稿を書いている。早くも予定が狂ってしまった。
 こぼしてばかりいても仕方がないので、無駄なことだが一応、展望だけはしてみよう。照ノ富士の休場が決まった。100%無理だろうとは思っていたが、こんなときは下手な芝居はせずさっさと休場を発表すべきだ。出る気もないのに期待を持たせるのはあまり良い事ではない。私に言わせてもらうと、つまりお客さんをだますことになる。この際ゆっくり治療に専念してもらいたい。何場所かかるか分からないが、再度元気な体で土俵に戻ることだ。
 それでは慣例により優勝候補を挙げてみよう。なかなか一人に絞るのは至難の業なので、三役以上全員と言うほかはない。しかし、それはあまりにも姑息(こそく)に過ぎる。私もこの道65年のプロであります。そのような無責任な事は言ってはいけません。では、私の考え抜いた予想を発表します。
 一番手は大関貴景勝。根拠はここ2場所2桁の星を挙げている。悪いなりに大関の面目は保っている。その安定感を買いたい。2番手は若隆景。先場所は序盤の3連敗をよくしのいで11勝したのは見事だった。その精神力の強さに期待する。くれぐれも初日を取りこぼさぬ事である。
 続いて豊昇龍も捨てがたい。負け越しそうでもあきらめないしぶとさは若隆景に通じるものがある。この辺りで大勝ちをしてもおかしくはない。大ざっぱに言うと、この3人に絞ってもいいと思っている。
 どうしてももう一人と問われたら、渋々だが御嶽海でしょう。大関に昇進し、相撲を甘く見てまさかの陥落。少しは思い知ったことだろう。大いに反省し頑張れば10勝はそれほど難しい話ではないと私は思っている。優勝も夢ではない。もし今場所で大関返り咲きに失敗すると、大関復帰は永遠になくなると思った方がいい。
 それから4人の小結陣だが、顔触れとしては面白い。中でも、玉鷲に注目したい。うわさによると元気いっぱいらしい。果たして、3度目の優勝はあるのだろうか。38歳(16日が38歳の誕生日)の、失礼、老雄玉鷲の土俵が楽しみなのは私だけか。おそらく協会の親方たち、特に部屋持ちの親方は内心、戦々恐々としているのではないだろうか。もし何も感じなかったら、その人は弟子を育てる資格はない。
 豊昇龍が力をつけて、来年中には大関昇進も十分に考えられる。逸ノ城もまだまだ十分に上位を狙える力を持っている。未完の大器、北青鵬も控えている。忘れていたが霧馬山も着実に力をつけている。今さら言っても始まらないが、日本人力士にはもっと頑張れと言いたいものだ。相撲に日本人もモンゴル人も関係ないと叱られそうだが、それはファンの人が言うことであって、私のような古い人間には納得がいかない。
 なぜモンゴルの力士が強いのか。答えは簡単だ。まず努力が違う。やる気が違う。話はそれるが、今年の学生横綱もモンゴル人である。いずれ角界入りするだろう。
 すでに十両にも素質に恵まれた若手が続々と出現している。あと2、3年もすると、幕内上位はモンゴル勢で占められるだろう。それに対抗できるとしたら若隆景、若元春兄弟に琴ノ若、琴勝峰、熱海富士、平戸海などなど。
 申し訳ない。今場所の展望がとんでもないところまで及んでしまったが、それだけ今の大相撲は苦境に立たされているということである。単なる老人の取り越し苦労で終わればいいのだが。
 それでは照ノ富士不在がさびしい場所になりましたが、他の力士たちに休場者はいません。今年最後の場所を力士全員で熱戦を繰り広げてもらいたいものです。
 終わりになりましたが、大関正代は体調の方は問題はないとのことです。ご当所場所ですから、頑張ってもらいたいものです。私も今場所だけは応援しましょう。
 それでは初日はテレビでお会いします。さようなら。
 (元横綱)
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