11万6000人の自治体職員が「上限」超える長時間残業 「第4波」の昨年4~6月、総務省調査

2022年5月14日 06時00分
 新型コロナウイルス流行「第4波」の昨年4~6月に、感染者への対応などで、残業や休日勤務の時間が月間上限を超えた自治体職員が、3カ月間で延べ11万6675人に上ったことが分かった。総務省がコロナ禍での時間外勤務の状況を調べるため、初めて実施した全国調査を基に集計。コロナ禍で保健所職員らが過酷な勤務を行っていた実態が裏付けられた。
 自治体は職員に時間外勤務をさせる場合、労使協定(36協定)や条例、規則で勤務時間の上限を決める。上限は「原則月45時間・年360時間」だが、忙しい部署は「月100時間未満・年720時間」などと定める場合が多い。月100時間は労災認定の基準となる「過労死ライン」だ。

 時間外勤務の上限規制 2019年4月の働き方改革関連法施行に伴って民間企業に時間外勤務の上限規制が導入され、公務員もそれに準じて取り入れた。民間では上限時間を各労使で原則月45時間などと定め、超えると違法となり罰則が科される。ただ民間でも震災による電気・ガスの復旧や、コロナ感染を予防するマスクや消毒液の生産など、労働基準監督署から「臨時の必要がある」と認められれば、自治体職員らと同様に上限を超え労働者を働かせることができる。

 上限を超えた職員の業務の内訳をみると、保健所職員など「コロナ関連」が4万2757人、コロナ以外の「災害対応」が3015人だった。だが、こうした非常時への対応ではない通常業務の範囲で上限を超える職員も7万903人に上り、議会対応などを理由に一部で残業が常態化している様子がうかがえる。
 調査には全国の全1788自治体が回答。管理職と警察や消防、教育委員会を除く113万8063人を対象に、3カ月間の各月に上限を超えた職員数を尋ねた。1カ月当たりに換算すると、対象職員の3%強に当たる約3万9000人が上限超えの長時間勤務をしていた。
 総務省の担当者は取材に「コロナ禍で残業せざるを得ない状況だったことを確認できた。人員配置の工夫や原因の検証をして上限超えの職員がゼロになるよう自治体にお願いしている」と話した。

◆本来は例外的な「長時間労働」、歯止めが必要

<解説> 自治体職員の残業上限超えが相次ぐ背景には、「公務」を理由に長時間働かせることが可能な仕組みがある。本来は例外的であるべき働き方が常態化。コロナ感染の波が押し寄せるたびに保健所職員らを過労死ラインを超えるまで働かせても、違法にはならない。

保健所業務でコロナ患者の対応にあたる看護師(写真は本文とは直接関係ありません)

 自治体職員の時間外勤務は、保健所のように36協定を結んで残業させる職場と、本庁のように首長らの指示だけで働かせることができる職場に分かれる。いずれも月100時間などと上限は設ける。
 問題は労働基準法と条例・規則で例外が認められていることだ。コロナ対応や災害を理由に労基署に届け出をした場合や、首長らが「重要な業務で特に緊急を要する」と判断した時などは、職員は上限を超えて働くことになる。
 厚生労働省は例外の適用を「必要な限度の範囲内」にとどめるように促しているが、長引くコロナ禍で保健所などで適用が繰り返されている。手続きを踏んでいればどれだけ働かせても罰則はなく、外部のチェックも利きにくい。
 前提として、公務員は国民全体の奉仕者だ。だが、だからといって働かせ放題にしていい理由にはならない。過労死を防ぐために実態を調べるとともに、罰則付きの上限を設けるなど、例外的な働き方に歯止めをかける仕組みが求められる。(畑間香織)

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