加齢とどのようにつきあっていくか。それは定年世代にとって、否が応でも突きつけられる人生の課題のひとつである。
「たくさんの“私”の物語を聞く中で年をとることはそう悪いことではないと思えるようになりました。年を重ねたからこそ見えてくる面白さがあるんだなって」
こう語るのは、フリーアナウンサーの遠田恵子氏。ディレクターとして番組制作も手掛けるNHKラジオ第一放送「ラジオ深夜便」の人気コーナー「わたし終いの極意」では《人生最期の日を迎えるまでの過ごし方》について、さまざまなゲストにインタビューを重ねてきた。
「詩人の新川和江さんには、何歳になってもスタートするのに遅すぎることはないと教わりました。どんなことでも10年間続ければ、その道の専門家になれる。『70歳になって何か始めても、80になれば専門家になれる。そう考えると、100まで生きてもいい気分になるでしょ』という発想が面白くて」
しかも、ここでいう専門家は決して特別なものだけを指すわけではない。「縫い物の裾をまつる」「豆を煮る」といったごく身近なことでも長く研究すれば“日本一”を目指せる。そんな地に足のついた提案なのである。
遠田氏が取材で出会った四国在住のある男性は長年、介護してきた妻を看取った後、ジョギングを始めた。その時点ですでにご本人も100歳を超えていたというから驚きだ。