夫婦別姓

子供の視点を踏まえて議論を 現制度には一定の意義 夫婦同姓規定「合憲」判決

最高裁大法廷で判決に臨む寺田逸郎裁判長(中央奥)ら=16日午後、東京都千代田区(大西史朗撮影)
最高裁大法廷で判決に臨む寺田逸郎裁判長(中央奥)ら=16日午後、東京都千代田区(大西史朗撮影)

 「夫婦同姓」を合憲とした最高裁大法廷の初判断は、日本の伝統的な家族観に沿うものだ。「わが国に定着した家族の呼称として意義があり、呼称を1つに定めることには合理性が認められる」。最高裁はそう位置づけたが、一方で「選択的夫婦別姓」導入の可否については明確な判断を示さず、国会に結論を委ねた。

 別姓推進派が「男女平等」や「個人の尊厳」など、夫婦各自の権利を強調することが多い半面、これまで子供の視点からの議論が尽くされてきたとはいえない。家族法学者がそろって「社会的弱者」と位置づける子供。親の選択次第で自分の意思に関係なく親子別姓を強いられた場合、精神的に未成熟な子供への心理的影響は不明だ。

 また、夫婦が互いに譲らず子供の姓を決定できなかった場合、家族内で子供が微妙な立場になりかねない。別姓を導入した諸外国では、夫婦がもめた際、子供の姓を裁判で解決することがほとんどだが、司法の結論が出るまで子供の立場が揺らぐことに変わりない。さらに、こうした経緯で決まった姓に愛着がわかず、家族関係が希薄になることも考え得る。

 子供にどのような影響を与えるのか判然とせず、善後策もない段階で、それでも導入することに社会的意義はあるのか。日本の将来を考慮すれば、大人の事情ばかりではなく、これからを担う子供に重点を置いた議論が必要だろう。(大泉晋之助)

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