トルコ、エジプトとの関係改善へ歩み寄り 「後ろ盾」失い方針転換か

2021年5月8日 20時37分
5日、カイロで行われたトルコとエジプトの外務次官級協議=AP

5日、カイロで行われたトルコとエジプトの外務次官級協議=AP

 【カイロ=蜘手美鶴】トルコがエジプトとの関係改善を進めている。5日には約8年ぶりにトルコの外交団がカイロを訪れ、2日間にわたり経済や地域情勢について協議した。トルコが歩み寄りに転じたのはバイデン政権下で一変した米トルコ関係が影響している。
 協議は外務次官レベルで行われ両国が対立するリビア問題や東地中海のエネルギー問題も議題となった。両国は共同声明で「関係改善に必要な話し合いができた」として本格的な関係修復に期待を表明した。

◆2013年に両国関係が悪化

 両国関係は2013年のエジプト政変で悪化。中東の民主化運動「アラブの春」で成立したイスラム主義組織「ムスリム同胞団」の政権が、当時国軍総司令官だったシシ大統領の軍事クーデターで倒れると、同胞団を支援したトルコはその後のシシ政権を「正統性がない」と厳しく非難。両国とも大使を追放し、さらにトルコが同胞団メンバーを自国で保護したことで対立は決定的となった。
 こうした中、トルコは3月中旬、「エジプトと外交関係を再開する用意がある」と突然表明。当初は懐疑的だったエジプトは、トルコが同胞団の国内放送チャンネルにエジプト批判の自粛を求めるなどしたため、徐々に態度を軟化させ、今回のトルコ外交団受け入れに至った。

◆米国との関係に冷え込み

 トルコが関係改善に動いたのは、1月にトランプ政権からバイデン政権に政権交代し対米関係が変化したことが大きい。エルドアン大統領は近年、米国のトランプ前大統領との関係を後ろ盾に強気な外交を展開。その結果、シリアやリビア問題を巡ってサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)と関係が悪化した経緯がある。
 バイデン氏は、トルコ政府の言論弾圧などを問題視しており、トルコは強力な「後ろ盾」を失った形だ。これまでの外交方針の転換を余儀なくされ、アハラム政治戦略研究センター(エジプト)のバシール・アブドルファタハ氏は「地域での孤立化を防ぐため、まずはエジプトへ接近を試みたのだろう」と話す。

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