<新型コロナ>急な解雇「生活できない」 タクシー乗務員 会社対応に憤り

2020年4月17日 16時00分

営業が停止され、駐車場に並ぶタクシー会社「ロイヤルリムジン」の車両=15日、東京都江東区で(一部画像処理)

 新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが激減したタクシー会社「ロイヤルリムジン」(東京都江東区)が「失業手当の方が有利」との理由でグループ会社の乗務員約六百人を解雇するとした対応に批判が出ている。経営が厳しいのは業種を問わず、労働組合や弁護士らは「会社は解雇回避の努力義務があり、不当な解雇だ。『失業手当を受給させればよい』というやり方がまかり通れば、雇用保険制度が悪用される」と危ぶむ。 (土門哲雄)
 「生活ができない。どこも求人を控えているので、次の勤め先を見つけるのも難しい」。グループ会社の乗務員の男性(53)は憤る。
 男性らは八日、金子健作社長から「雇用保険でしのいでください」と伝えられた。営業再開したら戻ってきてほしいとも言われ、事務所で「合意解約」「事業一部廃止に伴う人員整理」などと書かれた「退職合意書」へのサインを求められた。同社は八日から営業を順次休止。担当者は取材に「従業員の生活を維持するため。失業手当の方が休業手当より有利で、多くの従業員が同意してくれた」と説明。だが、男性は雇用保険の加入期間が足りず、失業手当を受給できない。
 男性や同僚らは個人で加入できる労働組合「日本労働評議会(労評)」に入り、解雇撤回などを求めて団体交渉を申し入れた。会社側は「解雇ではない」と主張しているといい、労評東京都本部の中里好孝委員長と男性は「会社が解雇予告手当を支払わずにすむよう合意退職を迫ったのではないか」と批判する。
 ロイヤルリムジンの担当者や男性によると、乗務員の給与は売り上げの五~六割だが、普段一回の売り上げが約七万円だった人が、新型コロナの影響で二~三割の二万円以下に落ち込み、最低賃金を下回ることもあった。
 他のタクシー会社は稼働台数を減らし、従業員に休んだ分の休業手当を払うなどして対応。国際自動車(東京)の担当者は取材に「乗務員の健康と雇用を守るためで、実施期間など細部を調整中」としている。
 会社は休業した場合、従業員に直近三カ月の平均賃金の六割以上の休業手当を支払う必要がある。最大九割を助成する国の雇用調整助成金を活用できる。一方、雇用保険から支給される失業手当は直近半年の賃金の45~80%で、離職時の年齢などによって異なる。厚生労働省雇用保険課の担当者によると、営業再開後の雇用を約束していた場合は、失業ではないとみなされ、支給されないケースも。
 日本労働弁護団事務局次長の中村優介弁護士は「会社は解雇回避の努力義務があり、営業を続けられないからといって、すぐに解雇するのは違法。雇用を守り、本来100%の休業手当を支払うべきだ。最終的には国からの補償が必要ではないか」と指摘している。

◆あす緊急電話相談

 ロイヤルリムジンの解雇問題を受け、日本労働評議会と暁法律事務所は18日午後1~4時、緊急ホットラインを開設し、タクシー業界の従業員からの電話相談に応じる。指宿昭一弁護士は「解雇は違法。退職合意書にサインしないと離職票を出さないとしており、意思に反する合意書は無効」としている。緊急ホットライン=電03(3371)0589、080(7560)3733。

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