「左派敵視ならがっかり」 バイデン氏に党内から圧力
米大統領選 癒えぬ分断(2)
「民主社会主義者」を自認する上院議員バーニー・サンダースが国防長官、ウォール街への規制を訴える同エリザベス・ウォーレンが財務長官に――。
米民主党左派の下院議員、アレクサンドリア・オカシオコルテスは9日、「あなたの『夢の政権』には誰が入閣する?」とツイッターに投稿し、前副大統領で大統領に就任見通しのジョー・バイデンの政権閣僚候補を募った。次々と候補にあがったのはサンダースのような左派の有力議員だ。オカシオコルテスもバイデンに左派の閣僚指名を公然と訴える。「左派敵視ならがっかりだ」
7日にバイデンが当選を確実にすると、左派が堰(せき)を切ったようにバイデンへ閣僚人事や政策で要求を突きつけた。2016年の大統領選では民主党候補の元国務長官ヒラリー・クリントンとサンダースが結束できず、ドナルド・トランプのサプライズ勝利を許した。これを教訓に今回は左派がバイデンに全面協力した経緯から早くも「見返り」を求めている。
9日、下院民主党の左派集団「議会革新議連」が約70人の議員を集めて電話会議を開いた。共同議長の下院議員プラミラ・ジャヤパールが提示した議連改革案には「所属議員の3分の2以上の賛成で決めたことに関し、3回のうち2回は従う」との方針が盛られた。法案や予算案について各議員の賛否を拘束し、議連の力を強める案だ。参加議員の9割が賛成し、21年1月招集の新しい議会で発効することになった。
下院ではこうした左派議連が組織票を誇示し、法案や予算案への賛成と引き換えに国民皆保険や気候変動対策「グリーン・ニューディール」を民主党指導部に迫る「取引」が取り沙汰される。新議会で民主党は下院の過半数の議席を維持しつつも、共和党との差は現在の35議席から15議席前後に縮まる見込み。民主党からのわずかな造反でも法案や予算案は可決できない。
サンダースの元側近は「実現しないから挑戦すらしないという姿勢はエリート政治家の考え方だ。左派の有権者は強く反発するだろう」とみる。トランプは47年間のバイデンの政治人生を「言葉ばかりで行動が全く伴わない」と痛烈に批判してきた。「民主党内の結束が政権交代のための方便だった」と左派に受け取られれば、左派のバイデン離れは急速に進む。バイデンの政権運営はいきなり難局に直面しかねない。(敬称略)
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。