iPS視細胞移植の安全性確認 神戸の病院、有効性確認も急ぐ

神戸市立神戸アイセンター病院は15日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った、光を感じる視細胞のシートを目の難病患者2人に移植したところ、移植後1年間の経過観察で異常はなく、治療方法の安全性を確認することができたと発表した。今後は有効性の確認を急ぐ。

手術は、視力をほぼ失った「網膜色素変性症」患者が対象。令和2年10月に60代女性、3年2月に40代男性の計2人に実施。健康な人から作ったiPS細胞から視細胞のもとになる細胞を作製。直径約1ミリのシート状に加工し患部に移植した。いずれも手術は成功し、視細胞は網膜に定着。手術後1年間の経過観察でも、拒絶反応やがん化、副作用がなかったことから、安全性を確認できたと判断した。

同病院によると、2例とも視力の回復はみられなかったが、60代の女性患者は文字や記号があるかどうかや、物体の動きを感じ取れる程度に、物を見る機能の改善がみられたという。

執刀した栗本康夫・同病院院長は「安全性が確認できたとともに、iPS細胞由来の視細胞を効果的に移植するための多様なデータが得られた。今後は有効性の確認を急ぎ、新たな治療法を早く患者に届けたい」と話した。

網膜色素変性症は、視野が狭くなり視力低下や失明につながる進行性の病気。網膜の視細胞が徐々に死滅し失われる。遺伝的要因で発症するとされ、根本的な治療法は確立していない。

■視細胞 眼球の内側にある網膜を構成する細胞の一つで、視覚の核心的な役割を担っている。薄い層状に並んでおり、網膜に到達した光に反応して刺激を電気信号に変え、見ている物の色や形などの情報を脳に伝える。1つの眼球に1億個以上あるが、障害が起きると視力が低下し、重篤化すると失明に至る。

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