森次晃嗣 「ウルトラセブン」で最も印象に残る回は「超兵器R1号」

[ 2022年12月1日 08:30 ]

「ウルトラセブン」に変身するウルトラアイの模型を手にする森次晃嗣
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 【牧 元一の孤人焦点】今なお強い輝きを放つ特撮ドラマ「ウルトラセブン」で、セブンに変身するモロボシダンを演じた俳優の森次晃嗣(79)が作品の放送55周年に当たり、現在の思いを語った。

 「55年も愛される作品になるとは夢にも思わなかった。未来を見据えて作られたような作品で、今見ても古いとは思わない。脚本の力を感じる」

 制作されたのは1967~68年。その直前、デビュー2年だった森次はドラマ「天下の青年」にレギュラー出演していた。

 「円谷プロの演技課の新野悟さんが4、5回くらい、『天下の青年』の撮影現場に見に来ていた。それで、モロボシダン役のことを聞かされて『推薦したい』と言われ、円谷英二さんたちがいる円谷プロに行ったら、一発で決まった。目が輝いていて透視力があるような感じの人を探していたようだ。僕は鞄を二つだけ持って北海道から出て来た人間だったので、モロボシダン的な部分があったのかもしれない」

 森次は神奈川県藤沢市に在住。セブンの撮影当時は連日、電車で現場に通っていた。

 「江ノ電に乗って、小田急線に乗り換えて成城学園前で降りて、バスで東宝前まで行って、現場の東宝美術センターまで歩いていた。当時は電車に乗っていても、今のように誰かに『モロボシダンだ!』と言われることもなかった。初めてのロケ撮影は『湖のひみつ』(第3話)で、富士五湖の西湖まで行ったけれど、あの時は発熱していて40度あった。それでも、山の中を走ったり、『エレキング』が湖にいることを想定して、長いさおを持ったスタッフから『目線をここに』と言われながら撮影した。湖畔に宇宙船の外観が作られていて、そこで宇宙船に出入りする場面だけ撮って、内部の場面は別の日にセットで撮った」

 作品はシリーズ前作の「ウルトラマン」に続いてヒット。視聴率は第1話「姿なき挑戦者」33・7%、第2話「緑の恐怖」33・8%、第3話「湖のひみつ」32・1%、第4話「マックス号応答せよ」32・5%…と推移した。

 「何しろ休みがなかった。土曜、日曜にはイベントがあって、バッグの中に隊員服、ヘルメットを入れて、北海道から九州まで行った。当時はマネジャーもいなくて、切符を渡されて、1人で移動していた。でも、イベントに行くと、みんなから声を掛けられ、こんなに人気があるんだと感じることができた。最も実感したのは、ずいぶん後に『ダン』という本を出した時(1998年)で、都内の書店でサイン会を開いたら、1階から4階まで行列ができた」

 放送当時より後年の方が評価が高いのがこの作品の特徴。海底原人にとって人間が侵略者という物語「ノンマルトの使者」(第42話、脚本・金城哲夫さん)や、ロボットが人間を支配する惑星の物語「第四惑星の悪夢」(第43話、脚本・川崎高さん、上原正三さん)などが高い人気を得ている。

 「放送当時の視聴率としては、分かりやすいウルトラマンの方がはるかに高かった。セブンは暗くマニアックで、子供が見るには怖かったと思う。再放送、再再放送を見て、内容にひかれてファンになった人が多いのではないだろうか。今見ても『第四惑星の悪夢』は凄い。惑星の長官の頭を秘書がカチャッと開けると、頭の中が機械になっていて、そこに油をそそぐ。人間が処刑されるシーンは世田谷区の体育館で撮影した。セブンのような物語を30分のドラマとして書ける脚本家は今の時代にはなかなかいない」

 ダンがアンヌ(ひし美ゆり子)に自身がセブンであることを告げて最後の戦いに臨む最終回「地球最大の侵略 後編」(第49話、脚本・金城哲夫さん)はウルトラマンシリーズの中で伝説化した。

 「最終回は人間ドラマだった。ダンが最後のセリフをキリヤマ隊長に言っても『そうだったのか…』で終わってしまう。満田かずほ監督がダンとアンヌの淡い恋模様のような流れを作って、それがうまく最終回につながったのだと思う。満田監督の『ノンマルトの使者』でダンとアンヌは隊員服ではなく私服で一緒に出かけている。アンヌはいつも隊員服か白衣だったので、ひし美くんはあの撮影で普通の服を着て喜んでいた」

 2022年の今、最も印象に残る回はどれか…?森次が即答したのは「超兵器R1号」(第26話、脚本・若槻文三さん)。地球防衛軍が自衛手段として惑星攻撃用兵器を開発する物語だ。

 この物語の中でダンは兵器開発競争について「それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ」と語っている。

 「当時20代だった僕はそのセリフの素晴らしさを感じていなかった。ああいうメッセージ性のある言葉を何げなく言っているところが凄い。兵器を持つと人間は変わってしまう。それはいつまでも続くマラソンで、今のロシアとウクライナに通じる」

 現在、「TSUBURAYA IMAGINATION」で配信中。既に何回も見た人も、まだ1回も見たことのない人も作品を堪能することができる。

 「斬新なので、若い人たちにも見ていただきたい」。55年後、地球で暮らすダンが呼びかけた。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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