二所ノ関親方が秋場所総括 印象に残った力士は熱海富士だけ 貴景勝「変化」で失ったもの多い

[ 2023年9月26日 05:11 ]

24日、秋場所で熱海富士(下)を下し、優勝した貴景勝
Photo By スポニチ

 24日に千秋楽を迎えた大相撲秋場所は史上4回目となる11勝4敗で大関・貴景勝(27=常盤山)が優勝を果たした。本紙評論家の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)は最後まで優勝を争った平幕の熱海富士(21=伊勢ケ浜部屋)の奮闘を評価しつつも、3大関ら上位陣の低調ぶりが低レベルの優勝につながっていると指摘した。貴景勝は25日、東京・両国国技館で会見し、綱獲りとなる九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)への思いを語った。

 秋場所は予想通りの大混戦となりました。盛り上げたのは幕内2場所目の21歳、熱海富士。ただし、その事実は今の角界の危機的状況を物語っています。熱海富士は確かに頑張りました。照ノ富士をほうふつさせる右四つの攻め。腰が据わった前傾姿勢も理想的です。終盤は上位との連戦が続き失速。千秋楽の朝乃山戦などを見ても、まだ実力差があることは否めません。史上最速優勝という「勲章」は逃したものの「経験」という財産を得ました。自分の現在の立ち位置と足りない部分は分かったはず。稽古環境が素晴らしい伊勢ケ浜部屋で猛稽古を積んでいますので、苦い体験を機に大きく羽ばたいてほしいものです。

 残念ながら今場所印象に残った力士は熱海富士だけです。優勝ラインは過去に3回しかなかった11勝。看板力士の3大関は貴景勝が11勝、霧島が9勝、豊昇龍は千秋楽にやっとのことで勝ち越しの8勝でした。全く物足りませんし、反省すべきです。

 熱海富士が終盤、上位との対戦が続いたのは上位陣の体たらくが原因です。数年前までは上位によるハイレベルの優勝争いが定番。横綱戦や横綱、大関戦がなくなることは皆無でした。最近は番付が崩壊したかのような取組編成が散見されます。そうせざるを得ない「混戦場所」が当たり前のようになっているのは心配です。

 霧島と豊昇龍は自分の形を持っていない、器用さがあだとなっています。対戦相手は怖さを感じないから自信を持って思い切り挑んでくる。2人はそれに対応しているだけで、「こうしたい」という積極的な姿勢が見えません。

 優勝した貴景勝は突き押しの形がある分、「強いイメージ」を伝えることはできます。決定戦も本割で圧倒したからこそ変化も決まりました。ただし勝つためには有効でも、一つ上(横綱)を狙うには失ったものも多かった。優勝4回は評価されても綱獲りへの期待は上がっていません。今、一番強い力士なので、満場一致で「横綱に」という声がかかる相撲を目指してほしい。(元横綱・稀勢の里)

続きを表示

「羽生結弦」特集記事

「テニス」特集記事

2023年9月26日のニュース