エチオピア戦闘、隣国に飛び火 エリトリア首都に攻撃
【カイロ=久門武史】エチオピアで拡大する連邦政府軍と北部ティグレ州の支配勢力との戦闘が隣国を巻き込み始めた。ティグレ州から隣国エリトリアに14日、ロケット弾攻撃があった。スーダンには戦闘を逃れたエチオピア難民が押し寄せており、アフリカ東部が不安定になる恐れがある。
ティグレ州政府を率いるティグレ人民解放戦線(TPLF)は15日、エリトリアの首都アスマラの空港を14日に攻撃したと明らかにした。ロイター通信によると、3発以上のロケット弾がアスマラに撃ち込まれ、このうち少なくとも2発は空港に着弾した。
エリトリアはTPLFと対立関係にある。TPLFはエチオピアの政権を主導していた1998~2000年にエリトリアと国境紛争を起こし、10万人が死亡したとされる。18年にエチオピア首相に就任したアビー氏はエリトリアと和平を結び、19年にノーベル平和賞を受賞した。
TPLFはエチオピア連邦政府軍がアスマラ空港を使っているとみているもようだ。エリトリアは今のところ反撃を控えている。アビー氏は15日「エチオピアは自ら作戦目的を達成する十分な能力がある」とツイッターで強調し、外国の介入をけん制した。
13日にはティグレ州に隣接するアムハラ州の空港にロケット弾による攻撃があり、エチオピア国内でも戦闘地域が広がっている。アムハラ州政府は連邦政府軍に協力し兵士を派遣している。
一方、スーダンではエチオピアから逃れてきた難民が膨らんでいる。スーダン国営通信は15日、同国に押し寄せた難民が約2万5千人に達したと伝えた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は13日「エチオピア北部の危機悪化を極めて憂慮する」と表明した。
エチオピア連邦政府軍とTPLFの武力衝突は11月上旬に始まった。アビー首相は9日に内戦の危機を否定し「作戦は間もなく終結する」と表明していたが、戦闘が収束に向かう気配はない。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは12日、ティグレ州南西部マイカドラで9日に多数の市民が殺害されたとの声明を発表。TPLFの犯行だとする目撃者の声を伝え、死者は数百人にのぼる可能性があるという。UNHCRは事実なら戦争犯罪にあたると非難した。
ティグレ州は電話やインターネットが遮断され、戦闘の詳細は明らかでない。