認知症行方不明 早期発見の工夫が命を守る

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 認知症の人が行方不明になるケースが年々増えている。国や自治体は、不明者を無事に保護するための仕組みづくりに取り組むべきだ。

 昨年1年間に全国の警察に届け出があった認知症の行方不明者は1万7636人で、9年連続で過去最多を記録した。このうち9割が70歳以上だった。

 大半は保護されたが、 徘徊 はいかい 中に電車にはねられて死亡するなど、遺体で見つかった人も450人に上った。用水路に落ちて水死したり、凍死したりする例もある。

 命を守るためには、行方不明者の居場所を迅速に突き止め、保護することが重要だ。

 認知症は、日付や時刻のほか、自分がいる場所が分からなくなるなどの症状が表れることもある。外出したものの、行き先を忘れ、道に迷うなどして、帰宅できなくなる人も珍しくない。

 体力がある人は、普段の行動範囲を超えて、遠くまで歩いて行ってしまうことがある。電車などで移動するケースも散見されるという。そうなると、家族だけで発見するのは難しい。

 群馬県高崎市は、認知症の高齢者を対象に、全地球測位システム(GPS)の端末を無料で貸し出している。高齢者の靴や衣服に装着し、所在が不明になると、委託先の見守りセンターが位置情報を家族に知らせる仕組みだ。

 家族が現地に行けない時はセンター職員や警察官が駆けつける。2015年の制度開始以降、1300人以上を保護したという。

 IT技術を有効に使い、自衛策を講じることが大切だ。自治体は、徘徊の不安がある高齢者の家庭を積極的に支援してほしい。

 不明当日に発見された人の生存率は8割を超えるが、日数がたつと死亡者が増えるという調査結果もある。早期発見が肝心だ。

 北海道釧路市では1990年、ゴミ出しに出た女性がそのまま帰らず、4日後に遺体で見つかる事案があった。そのため、市と周辺自治体はタクシー会社やFM局とのネットワークを構築した。

 家族から捜索依頼があれば、警察を通じ、関係機関に不明者の特徴が一斉に伝えられる。FM局はその情報を放送で流し、市民に協力を呼びかける。タクシー運転手は走行中、該当者とみられる人がいないか目配りするという。

 国内の認知症高齢者は、2025年には約700万人になると推計されている。国は、自治体間の連携強化など、地域の見守り態勢の充実に努める必要がある。

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3181853 0 社説 2022/07/20 05:00:00 2022/07/20 05:00:00

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