世界最大のプロレス団体「WWE」(米国)が世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC」(同)と正式に合併し、大きな注目を集めている。

 4月にUFCの親会社「エンデバー・グループ・ホールディングス」がWWEの買収を発表。WWEとUFCが経営統合され、今週12日には新会社「TKO」が設立された。エンデバー社が新会社の株式51%、WWEの株主が49%を所有。同日にはTKOがニューヨーク証券取引所で取引を開始し「株価は2・4%上昇した」(米メディア「CNBC」)。

 新会社は4月の時点で、「総額210億ドル(約3兆1000億円)以上の、ライブスポーツとエンターテインメントの大企業となる」(WWEビンス・マクマホン会長)としていた。注目は誰がこの巨大スポーツエンターテインメント企業のかじ取りをしていくかだ。

 米メディアによると、WWEの身売りは同社のビンス会長が主導したとされる。同氏はTKOの取締役会長も務めるが、「CNBC」のインタビューに応じたTKOのマーク・シャビロ社長兼COO(最高執行責任者)は、エンデバー社トップでTKOのアリ・エマニュエルCEO(最高経営責任者)が「会社を経営している」と明言。その上で「ビンスには経験と影響力があり、その役割を果たすだろうが、彼はCEOの役割がアリにあることを理解している。これは共有のポジションではない」と、新会社の運営はビンス会長でもUFCのダナ・ホワイトCEOでもなく、親会社のトップが行っているとした。

 WWEの運営はビンス氏の祖父、父の代からマクマホン一族が担ってきた。ビンス氏の代では世界的なスポーツエンターテインメント企業に発展させた。現在もビンス氏の娘ステファニー氏の夫、トリプルHがCCO(最高コンテンツ責任者)を務め、新会社の下でも同職にとどまる。

 ビンス氏は「スポーツエンターテインメントの帝王」「悪の天才」として40年以上にわたって、リング内外でWWEを支えてきた。新会社でも株式16・4%を持つ株主だけに今後も大きな影響力は残るだろうが、これまでのような〝独裁者〟としてのWWE支配は終わりを告げることになった。

 一方で、WWE売却を進めたビンス氏は昨年、自身の〝不倫口止め料疑惑〟が発覚。WWEを引退したが、今年になり会長として復帰した。「CNBC」によると「彼はまた、最近いくつかの法的問題を抱えている。最近提出された書類によると、7月17日、連邦法執行機関はマクマホンに対し、性的不品行疑惑に起因する連邦大陪審召喚状を送達した。この捜査では起訴はされていない」。ビンス氏はいまだ疑惑の渦中にあり、同氏の今後が不透明なことも確かだろう。