「麻酔い」はない 厚労省が『大麻栽培でまちおこし!?』ホームページを削除 栽培農家の反発受けて

2021年6月17日 12時00分
 厚生労働省の監視指導・麻薬対策課は、違法栽培防止などを訴えるホームページ(HP)「大麻栽培でまちおこし!?」(16ページ)の内容に誤解を与える表記があったとして、このHPを削除した。

削除された「大麻栽培でまちおこし!?」の一部

◆「畑で酔っ払う」に偏見や誤解

 HPには「『麻酔い』に注意 畑に入ると、空中に浮遊した大麻成分を吸い込んでしまい、酔っ払ったような症状になります」などと書かれていた。本紙は昨年9月23日夕刊で「『偏見や誤解を生む』として栽培農家が反発している」との記事を掲載した。
 同省は今年1月に識者による「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を立ち上げ、大麻取締法への「使用罪」導入の是非や医療用大麻解禁の可否などに加え、厳格な規制下にある神事用などの大麻草栽培の規制のあり方も議論した。
 4月下旬の検討会では、江戸時代から続く栃木県の栽培農家大森由久さん(72)や岐阜県で神事用の麻栽培に関わる若園和朗さん(65)を呼び、意見を聴取。厚労省が複数の大麻栽培農家に対し作業後の尿検査をした結果、麻薬成分は検出されず、「麻酔い」は確認されなかったことも報告された。

◆合理的に、全国統一基準を

 今月11日の最終検討会の「とりまとめ」では、改めて「麻酔い」を否定。さらに、大麻草に含まれる幻覚成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」について「免許を受けて栽培している大麻草はTHC含有量が少ない」として、不合理な通知の見直しや、都道府県ごとの栽培免許基準の統一なども打ち出した。検討会では、HPの削除も口頭で報告された。
 監視指導・麻薬対策課の田中徹課長は通知の見直しについて「(自治体によっては)畑に2メートルの柵を作るよう通知しているが、生えている大麻草を集めてTHCを採る人などいない。栽培農家の方とは意見交換し、見直すべきは見直す」と話した。
 厚労省は、使用罪導入と医療用大麻解禁については検討会で賛成する意見が多かったとして、大麻取締法の改正に向けた準備に入る。 (椎谷哲夫)

 国内の大麻栽培 1948年制定の大麻取締法は、都道府県知事から「大麻取扱者」の免許を得た者以外の栽培や譲渡、研究用の使用、所持等を禁止している。当時の連合国軍総司令部(GHQ)は全面禁止を要求。政府は栽培農家を守るため1年更新の免許制にした。更新時の審査では、立ち入り検査や作付面積の報告義務などが課せられ、監視カメラやフェンスの設置を課す県もある。

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