株の信用取引、夜間も 17年にも証取外で解禁
金融庁検討
金融庁はお金を借りて株を買うなどする信用取引について、東京証券取引所が閉まっている早朝や夜間もできるようにする規制緩和に乗り出す。いまは取引所にしか認めていない信用取引を、証券会社などが独自に運営する「私設取引所」にも解禁する方向だ。個人投資家の株売買で半分以上を占める信用取引の利便性を高め、株式市場の活性化につなげる。
取引所以外での取引や市場間競争のあり方については、金融審議会(首相の諮問機関)が議論している。年内をメドに結論を出し、早ければ来年から解禁する。
信用取引は利用者が一定の担保を入れたうえで、証券会社などから資金や株券を借りて株を買ったり売ったりする。少ない元手で多額の売買ができるのが特徴だ。東証によると個人投資家の売買代金の6割強はこの信用取引が占めている。
現在は東証など取引所での売買にしか認めておらず、証券会社などが運営する私設取引システム(PTS)と呼ばれる私設取引所では現金でしか取引できない。運営会社が、市場開設者と顧客に資金や株券を貸し付ける立場を兼ね、利益相反を起こす懸念があるためだ。
金融庁はこうした利益相反や行きすぎた投機を防ぐ仕組みづくりを前提に、私設取引所でも信用取引ができるようにする方向で検討する。法令ではなく業界による自主的なルールづくりを想定しているもようだ。
私設取引所は独自に営業時間を設定し、東証が閉まっている夜間や早朝も取引できるなど柔軟に運営できる。現在は信用取引ができないこともあり、SBIジャパンネクスト証券と米ファンド系のチャイエックス・ジャパンの2社にとどまる。株取引全体に占める割合も5%程度で9割は東証に集中している。
PTSでの信用取引が解禁されれば、投資家からみて使い勝手の面で取引所とPTSの差は小さくなる。市場間の競争が活発になり、証券会社が取引所やPTSに支払う手数料の引き下げにつながる可能性もある。
個人投資家は日本時間の夜間に発表となる欧米の経済統計などをみて、信用取引を使ったヘッジ(損失回避)の取引もしやすくなる。
米国では50以上の取引施設が乱立しており、最大手のナスダックでも取引シェアは15%程度。取引所以外での取引が30%以上を占めており、市場間競争は激しい。金融庁は私設取引所を含めた市場同士で健全な競争原理が働く環境を整えることで、投資家の多様なニーズに応じたサービスの向上などにつながるとみている。
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