北斎重文など九博に寄贈 東京の古美術商 コレクション259件
九州国立博物館(九博、福岡県太宰府市)に、東京の古美術商、故坂本五郎さんのコレクション259件が寄贈された。江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の肉筆画など国重要文化財2件をはじめ、重要美術品4件など貴重な品が含まれている。九博は今年9~10月の企画展で坂本コレクションを一般公開する予定。
九博によると、寄贈品は陶磁器や書跡、絵画、彫刻など。大半は茶の湯の釜が占めており、日本の主要産地を網羅している。中でも有名な芦屋釜の産地が福岡県であることから、九博が寄贈先に選ばれたという。
国重文の北斎筆「日新除魔図(にっしんじょまず)」は、北斎最晩年の1843~44年に描いた私的作品。毎朝、魔よけの意味がある獅子や獅子舞を描きためた219枚で構成されている。これまで研究者の目に触れる機会が少なく、九博の山下善也主任研究員(日本近世絵画史)は「北斎の全体像を知る上で重要な役割を果たす」と話す。
また、もう一つの国重文「色鍋島松竹梅文瓶子(いろなべしましょうちくばいもんへいし)」は17世紀末~18世紀初頭に作られた鍋島焼の名品。松竹梅や鶴亀など縁起物が色鮮やかに描かれている。九博の酒井田千明アソシエイトフェロー(陶磁史)によると「色鍋島の最盛期に技術の粋を集めて作られた作品。将軍家への献上品だった可能性もある」という。
坂本さんは東京・日本橋の古美術店「不言堂」の創業者。古陶磁や中国青銅器を中心に収集し、2016年に92歳で亡くなった。
=2018/01/11付 西日本新聞朝刊=