秩父夜祭 下郷笠鉾に車輪トラブル 残念…「御旅所」集結できず

2023年12月5日 07時49分

外れそうな鉄輪をはめ込む応急処置を行う下郷町会の関係者ら=いずれも秩父市で

 日本三大曳山(ひきやま)祭りの一つで、埼玉県秩父市内を彩る「秩父夜祭」の大祭があった3日、山車6基のうち1基が車輪の不具合で曳行(えいこう)を中断するトラブルがあった。けが人はなかったが、花火とともに祭りのフィナーレを飾る全6基の御旅所での集結が実現しない異例の事態に、関係者は「残念」と肩を落とした。(福田真悟)
 中断したのは、高さ約7メートルと、6基のうち最も大きい下郷笠鉾(したごうかさぼこ)。トラブルは、午後7時ごろ始まった秩父神社から約1キロ離れた同市役所隣の御旅所(おたびしょ)への曳行中に起きた。

車輪の不具合が発覚する前、曳行される下郷笠鉾

 6基中2番目に出発した下郷笠鉾は、午後8時ごろ、メインの大通りから御旅所方面の道路へ方向転換。数十メートル進んだところで曳行の担当者が異変に気づき、調べると、四つある車輪のうち右前方の車輪(直径115センチ、厚さ24センチ)の鉄輪が外れそうになっているのが原因と判明した。
 鉄輪は木製の車輪の外周に取り付けられ、強度を保つ役割を持つ。担当者らは、この状態で先に控える傾斜25度の難所「団子坂」を乗り越えるのは危険などとして、御旅所への曳(ひ)き上げを断念。後続の4基の曳行を妨げないよう、道路の左端に寄せて止まった。追い越しの際、互いの関係者がエールを送り合う姿もみられた。
 その後、町会の職人らが複数のくさびを打ち込むなどの応急処置を施した上で、4日未明に収蔵庫への帰還を開始。トラブル発生から約9時間後の同日午前5時すぎ、無事収容された。
 市によると、車輪のトラブルで御旅所への曳き上げが中止になった事例について、下郷笠鉾保存会や秩父神社などの関係者は「記憶にない」と話しているという。また、市文化財保護課の目視では、鉄輪が外れそうになったのみで、国重要有形民俗文化財としての損傷はないという。鉾を解体する10日、状況を調べ、車輪の修繕方法や今後の対策を検討する。
 保存会の江原謙一会長(72)は「曳行の中断は残念だが、けが人を出すわけにはいかなかった」と苦渋の決断を振り返り、「来年は御旅所までたどりつけるよう、しっかり対策を取りたい」と話した。

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