京都大、iPSからがん攻撃の細胞作製、免疫療法に道
京都大iPS細胞研究所(CiRA)の金子新准教授らは人のiPS細胞からがんを攻撃する「キラーT細胞」を作製した。肝臓がん患者などの細胞から、遺伝子を自在に改変するゲノム編集で作った。マウスで効果も確認した。今年のノーベル生理学・医学賞の授賞決定で注目を浴びるがん免疫療法の新たな手法につながる。
研究成果は16日付の米科学誌セル・ステム・セルに掲載される。
研究チームはまずがん患者本人の細胞からiPS細胞を作り、キラーT細胞に再生させた。このキラーT細胞のままではがん細胞を攻撃する能力が「RAG2」という遺伝子によって低いため、ゲノム編集で遺伝子を改変し安定的にキラーT細胞が働くようにした。マウスの実験で効果も確かめた。
また他人の細胞から作ったiPS細胞も活用。「TCR」というがん細胞を狙うセンサーをiPS細胞に導入して作製した。マウス実験では寿命が延び、がんの進行が遅くなった。
金子准教授は「免疫療法が効かない患者にも効く可能性がある。iPS細胞を使えばより多くの人に使える。将来的には製剤化を検討することになるだろう」と話した。臨床試験の準備も進めており「そう遠くない時期に始められる」(金子准教授)としている。