「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」事務局長に
1997年には中川昭一さんが代表を務める「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が発足し、安倍さんは事務局長に就任しました。
この会の記録が書籍となって残されていますが、そこでは歴史教科書問題や慰安婦問題などをめぐって、官僚やリベラル派の政治家、左派的知識人に対する激しい批判が繰り返されています。
安倍さんの発言(登壇者への質問)を読んでいくと、その大半は慰安婦問題を歴史教科書に掲載することへの批判にあてられています。安倍さんの歴史教育についての思いは、次の言葉に集約されています。
小学校・中学校では、自国に対する誇りを醸成する教育をしなければならない。まずは、健全な愛国心を養う教育をしなければならない。左翼によって曲解され、捻じ曲げられた歴史観を教えてはならない。そう強く訴えます。
安倍さんは例えとして、子ども向けの偉人の伝記を取り上げます。小学生を対象に書か
れた偉人伝には、その人物の立派な側面ばかりが綴られています。しかし、実際の人物は様々なネガティブな側面を持っています。酒に溺れたり、家庭の外に愛人をつくったり。この負の部分をどのように伝えるべきか。
安倍さんは「私もこういう素晴らしい人間になりたいなと思わせる気持ちを育成するということが大切」なので、まずは立派な部分だけを教えればよいと言います。負の部分を教えると「極めてひねくれた子供が出来上がっていく」のでよくない。人間は複雑な側面を持っているということがよくわかってきた段階で、負の側面を教えればよいので、歴史教育については小学校・中学校・高校と大学のような場所では「それなりに教える内容とか態度が違って(中略)いいんじゃないか」と続けます(前掲書)。
だから、慰安婦問題は歴史教科書で教える必要はない。自国への誇りを持たせるための教育段階では、教科書に掲載する必要などない。
社会問題になっているから掲載するというのであれば「『援助交際』を載せるつもりがあ るのかどうか」(前掲書)。性暴力の問題を教えるべきというのであれば、痴漢行為を行って捕まった「ある新聞のある論説主幹」の性暴力はどうなるのか。こちらのほうが性暴力の本質なのではないのか(前掲書)。そう主張します。
さらに元慰安婦の証言には「明らかに噓をついている人たちがかなり多くいる」と言及し、長年沈黙を続けてきたことへの疑問を述べたうえで、次のように発言しています。
そして、慰安婦問題を追及する左派知識人への反発を述べます。