日本相撲協会に設置された「大相撲の継承発展を考える有識者会議」の第11回会合が19日、東京・墨田区の両国国技館で開かれ、山内昌之委員長(73)=東大名誉教授=が協会の八角理事長(57)=元横綱北勝海=に最終提言書を提出した。「一代年寄」について認める根拠は見いだせないなどと言及しており、44度の優勝を誇る横綱白鵬(36)への適用が、事実上閉ざされかねない見解が示された。
「大相撲の伝統と未来のために」と題した48ページにも及ぶ提言書では、外国出身力士に大相撲の伝統文化を理解させるため、師匠の指導力や協会のガバナンス(統治)の重要性などが記された。その中で、現役時代に顕著な実績を残した力士が引退後に、現役名のまま親方になれる「一代年寄」についても言及していた。
一代年寄は当該横綱一代限りの特例で継承が認められず、有識者会議は部屋の継続、伝統の継承と矛盾する「異形の資格」と表現。これまで一代年寄を名乗った横綱大鵬、北の湖、貴乃花(千代の富士は辞退)3人と、不世出の大横綱双葉山、名横綱といわれた栃錦、初代若乃花らにはこうした待遇がなされなかった不統一性も問題視された。
さらに、公益財団法人へ移行した現協会の定款には根拠となる規定や制度は存在せず、一代年寄を認める根拠は見いだせないと論じ、旧協会時代のある時期に限定された慣例とした。
この提言は、史上最多44度の優勝を誇る白鵬にも影響を与えそうだ。会見した山内委員長は「廃止ではなく、制度そのものが本来なかった。存在しないものは相撲の伝統に立ち返らないといけない」と説明。白鵬へ資格を与える道が閉ざされる意向が示された。提言は重く、八角理事長は「そういう場面があったら理事会で審議し、真摯(しんし)に検討していきたい」とした。