安倍首相が山下貴司法相を抜擢した理由

記者会見に臨む山下貴司・法相=2日午後、首相官邸(佐藤徳昭撮影)
記者会見に臨む山下貴司・法相=2日午後、首相官邸(佐藤徳昭撮影)

 安倍晋三首相が2日の内閣改造で、自民党石破派の山下貴司法務政務官を法相に抜擢したのは、9月の総裁選で石破茂元幹事長を支持した勢力を「人事で干す」といったマイナスイメージがつくのを避けることだけが目的ではない。

 「とにかく新しい国づくりのため一緒に頑張ろう」

 首相は1日夜、山下氏に電話をかけ、閣僚に就くよう直接口説いた。山下氏は想定外の申し出に「私でよろしいんですか?」と聞き返したが、最終的に閣内で尽力する意向を伝えた。

 山下氏は平成14年から約3年間、在ワシントン日本大使館に法律顧問として赴任。米国内で、日本政府を相手取った慰安婦訴訟で指揮を取り、米連邦最高裁まで争った末に勝訴した。

 国政進出後は憲法改正にも意欲的だ。昨年の月刊「正論」3月号では、「憲法を変えるかどうか最終的に決めるのは国民投票であり(議員が)議論から逃げてはならない」と、訴えた。首相の「国民から国民投票の権利を奪ってはならない」という主張と重なる。

 首相は自身に近い政治信条を持つ山下氏に目をつけたようだ。首相は第4次安倍改造内閣の発足を受けた2日の記者会見で「総裁選で誰に投票したか、全く考える余地はなかった」と述べ、人物本位で選んだことを強調した。

 もっとも山下氏は、小泉進次郎元筆頭副幹事長の腹心として知られる。今回の抜擢は首相が小泉氏の人脈に影響力を持とうとする狙いも見え隠れする。(水内茂幸)

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