兵庫県三木市久留美の長久橋のたもとに鎮座していた「大勢至菩薩(だいせいしぼさつ)」が、河川工事により、近くの慈眼寺境内に移された。橋が架かる美嚢川は古くから交通の要衝で、かつては度重なる洪水にも見舞われた。往来の安全を願い、200年以上祭られてきた仏像。場所は変わっても長久橋の方角を向き、見守り続ける。(小野萌海)
大勢至菩薩は、観音菩薩とともに、阿弥陀如来の脇に控える知恵の仏で、午(うま)年生まれの守護仏。久留美地区の大勢至菩薩は、長久橋下流の右岸に江戸期の1813年ごろからあったとされ、台座に久留美村、橋世話人などと刻まれている。
かつて川は木板の橋を渡していたが、洪水で流されることもあり、住民は菩薩を祭り、安全を祈願してきた。1990年には、大水や風雪で老朽化した像を造り替え、今も毎年1月23日に祭りを行っている。
河川敷近くに住む男性(89)は子どもの頃、仏像の前で毎年1月にどんど焼きをしていたことを懐かしむ。息子が病気を患っていた時期に、毎日仏像の水や花を替えていると、ふと知人の医師が頭に浮かんだ。すぐに連絡を取り、治療をしてもらうと、息子の病気は治ったという。男性は「ありがたいお地蔵さん(菩薩)なんや」とにこやかに話す。地区外から定期的にお参りする人もいるといい、広く親しまれている。
河川の幅を広げる工事に伴い、仏像も川に浸かってしまうため、敷地も広く参拝しやすい慈眼寺の境内に台座ごと移転された。12日には、同寺院で点眼供養を行い、住職が筆を手に念を込めた。岩崎泰仁区長(68)は「無事に(移転を)終えることができた。ぜひこちらにお参りしてほしい」と話していた。
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