インタビュー:中国大使、米強硬派による「悲惨な結果」に警鐘

[ワシントン 27日 ロイター] - 中国の崔天凱・駐米大使は27日、ロイターとのインタビューで、米国内の強硬派が両国経済の分断を試みれば、悲惨な結果を招くと警告。中国は現在の難局を交渉で解決することを望み、模索してきたと説明した。
崔大使は「双方の懸念に対し均衡の取れた姿勢で臨むことが、交渉による貿易問題解決の鍵だと確信している。率直に言って、これまでのところ米側はわれわれの懸念に対する十分な反応を示していない」と指摘。「一方が複数の要求を示し、他方がすべてを満たすだけという状況は受け入れられない」
一方、米国との貿易摩擦において、中国政府が保有する米国債を武器として使うことを真剣に検討しているとは思わない、と語った。
中国は米中貿易摩擦が悪化した場合、保有する米国債の売却や購入削減を検討するかとの質問に対して大使は「われわれは世界の市場で金融不安定を引き起こしたくない。これは非常に危険で、火遊びのようなものだ」と説明した。「中国政府でこれを真剣に検討している人はいないと思う。そんなことは逆効果になる可能性がある」
米財務省データによると、9月末時点の中国の米国債保有は1兆1500億ドル相当で、海外投資家の保有規模としては最大。ただ、昨年同期の1兆1900億ドルからは減少している。26日時点で米国債発行残高は約15兆9700億ドルだった。
崔大使は、中国の米国債保有状況は両国の経済的な相互依存を示しており、その関係を解くことはほぼ不可能で危険だと指摘した。
また、米政府が人権侵害を理由に中国の新疆ウイグル自治区トップを制裁対象に指定した場合、「相応の」報復措置を講じる構えだと表明した。
崔大使は、同自治区で中国政府はテロ対策に取り組んでいると主張。米軍がイラクやシリアで過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦を展開してきたことを引き合いに出し、米側はダブルスタンダード(二重基準)を使っていると批判した。
「ISとの戦いを担う米国の当局者らに制裁が科されることを想像できるだろうか」と疑問を呈した上で、「そのような措置が講じられれば報復する必要がある」と言明した。
アイテム 1 の 2  11月27日、中国の崔天凱・駐米大使はロイターの取材に対し、米国内の強硬派が両国経済の分断を試みれば、悲惨な結果を招くと警告した。ワシントンで6日撮影(2018年 ロイター/JIM BOURG)
<米政権内では意見の隔たり>
ホワイトハウスの内部関係者らによると、対中政策を巡り政権内で意見の隔たりがなお見られるという。
ナバロ通商製造政策局長やライトハイザー米通商代表部(USTR)代表らが対中強硬派と目され、米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長やムニューシン財務長官らは現実主義者とみられている。
カドロー委員長は27日、今週の米中首脳会談について、トランプ大統領は貿易問題で合意が可能と考えているが、進展がなければ中国からの輸入品に対する関税を引き上げる用意があると明らかにした。
トランプ大統領と中国の習近平国家主席は20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれるアルゼンチンで30日に夕食会に出席する。現時点で両国が首脳会談の正式な議題で合意しているか明らかでない。カドロー氏はホワイトハウスで記者団に対し、補佐官レベルの会合は現時点では予定されていないと明らかにした。
同氏によると、トランプ大統領は補佐官らに取引(ディール)ができる可能性は十分にあると考えており、オープンな姿勢との考えを示した。
しかし同氏は「一定の条件を満たす必要がある」とし、知的財産権の侵害や強制的な技術移転、中国に進出している米企業の所有を巡る問題、コモディティー(商品)に対する高関税と非関税措置、民間企業に対するハッキングなどを「解決が必要」な問題として挙げた。
中国が妥協案を示したかどうかについてはコメントを避けた。
進展が得られなければ、トランプ大統領は2000億ドル相当の中国製品に対する輸入関税率を10%から25%に引き上げる用意があるとカドロー氏は表明。さらに追加的に2670億ドルの中国製品に輸入関税を掛ける可能性もあるとし、「過去の事例から学んだ通り、トランプ大統領は行うと言ったことは行う」と述べた。
*内容を追加しました。

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