台風15号の影響 千葉県で固定と携帯回線の不通広がる
9月8~9日に首都圏を襲った台風15号の影響が、通信分野では台風が去った後の10日にかけて拡大している。NTT東日本は千葉県内を中心に、10日になって非常用電源の枯渇により複数の電話局が停電し、通信が途絶するケースが相次いでいると明らかにした。NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社は非常用電源で運用している基地局が多数あり、燃料やバッテリーを補給しながら綱渡りの運用を続けている。
NTT東日本は9日夜から10日朝にかけて、アナログ電話約1万6000回線、ひかり電話約1万6000回線、「フレッツ光」などの光回線(FTTH)約2万2000回線の計5万4000回線が不通になった。不通の範囲は拡大し、10日午後2時時点でアナログ電話約2万8000回線、ひかり電話約5万4000万回線、FTTH約7万7000回線の計15万4000回線が不通となった。電源が復旧しない場合、今後さらに不通が増える可能性があるとしている。
「台風による停電を受けて非常用発電機や移動電源車で電源を供給して運用していたが、燃料が枯渇して通信サービスを提供できなくなる電話局が出てきている。停電の範囲が広範で燃料の供給も間に合わない状況にある」。NTT東日本の広報はこう説明する。
携帯3社にも電源届かず、「収束か長期化か見通せない」
携帯大手3社は千葉県内を中心に多くの基地局で商用電源が届いておらず、10日夜時点で基地局の停波により圏外となっている地域がある。稼働中の基地局についても「電源車や発電機、移動基地局車などを現地に派遣して全力で作業している。10日昼時点で停波エリアは減少傾向にあるが、今後の復旧は東京電力の電源復旧次第であり、すぐに収束するか長期化するかは見通せない状況」(ソフトバンク広報)としている。
東京電力パワーグリッドによると、10日午後8時30分時点で千葉市や市原市、八街市など千葉県内の45市区町村、約52万戸で停電が続いている。復旧作業が長引いており、電源の枯渇による携帯基地局の停波が広がることも懸念される。
データセンター集積地にダメージ
データセンターを多く抱える千葉県で電話局が停電したことにより、情報システムに被害も出ている。
KDDI傘下のじぶん銀行は10日正午前から午後5時台にかけて、提携金融機関のATMで入出金や残高照会、カードローン取引ができなくなった。NTTデータの決済総合プラットフォーム「CAFIS(キャフィス)」とじぶん銀行のシステムなどを接続する通信ネットワークがつながらなくなったためだ。
中央労働金庫でも同日午前11時26分からネットワーク障害発生により、一部の提携先金融機関のATMで利用できない状況が続いていた。現在は復旧している。
(日経 xTECH/日経コンピュータ 金子寛人)
[日経 xTECH 2019年9月10日掲載]