ロシア、英軍艦に警告射撃 黒海で緊張高まる
【モスクワ=石川陽平】ロシア国防省は23日、英駆逐艦が黒海の「ロシア領海」に侵入したとして、現地時間同日正午(日本時間同日午後6時)すぎに複数の警告射撃などを行ったと発表した。黒海ではロシアだけでなく、米英など北大西洋条約機構(NATO)軍も活動を活発にしており、軍事的緊張が高まっている。
ロシア国防省によると、英駆逐艦「ディフェンダー」がクリミア半島セバストポリ近くの「ロシア領海」を侵犯し、国境警備隊の艦船が2度にわたり警告射撃を実施した。戦闘爆撃機スホイ24も、英駆逐艦の航行ルートに警告の爆弾を投じたという。
ただ、英国防省はロシア側による警告射撃はなかったと指摘し、英駆逐艦は国際法に従いウクライナ領海を航行していたと発表した。この駆逐艦に乗船していた英BBCの記者は、20機以上のロシア軍機が上空に接近し、同国の国境警備隊の艦船が航行を妨げようとしたと伝えた。
ロシアは2014年、ウクライナで親欧米派勢力により親ロシア派政権が打倒されたことを受け、黒海に面したウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した。セバストポリにはロシアの黒海艦隊の主力基地があり、ロシアは周辺海域を自国の領海と主張し、欧米の軍艦に航行しないよう警告してきた。
さらに黒海では6月末から米国とウクライナの海軍が主導する多国籍訓練「シーブリーズ2021」が本格化する。ロシアではこの軍事訓練をウクライナの軍事化を加速し、地域情勢を不安定にするものだと批判している。
近接するウクライナ東部国境付近とクリミア半島周辺では今春、ロシア軍が10万人以上とされる部隊を集結し、軍事的緊張が高まった。黒海周辺にはロシア軍をけん制する欧米軍の艦船や航空機が多数進入している。ロシア軍機の緊急発進やロシア艦船による欧米の艦船の追跡航行が相次ぎ、一触即発の情勢が続いている。
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